競馬JAPAN

協力:
  • Googleログイン
  • ログイン
  • 無料会員登録
  1. 心地好い居酒屋:第46話
  2. RSSフィード ツイッター YouTube はてなブックマーク

昨年も54万馬券!師走競馬を攻略せよ

秋の東京・京都開催はココを買え!昨年も54万馬券的中!師走競馬の攻略法は? ──秋の東京・京都開催に引...
続きを読む

競馬の天才!タイアップコンテンツ

競馬の天才!タイアップ あの「最強」チームが集結した新雑誌 遂に10月12日(金)新装刊! ...
続きを読む

読んで納得の競馬コラム

樋野竜司・今週の政治騎手 先週のエリザベス女王杯はモレイラ騎手が騎乗したリスグラシューが勝利。GⅠ...
続きを読む

【PR】岡田牧雄の一口馬主クラブ

ノルマンディ―岡田牧雄の所属馬・生産馬情報も配信!特典満載の¥0メール会員募集中! ...
続きを読む

競馬コラム

心地好い居酒屋

2018年07月01日(日)更新

心地好い居酒屋:第46話

「結果決勝トーナメントに行けたから、良いのかも知れんが、最後の10分はなんじゃ。腹が立って腹が立って…。俺が折角初めてライブで観たというのによぉ。観客をバカにしてると思わねぇか」

日本とポーランド戦が行われた29日の飲み会でのこと。4人プラス1が揃って間もなく「含鉄」の親爺が口火を切ったのだ。

だいたいがサッカーそのものへの興味は薄く、ライブでなんて観たこともないだけに憤懣やるかたない様子。もっとも親爺が初めてかどうかは世間的には関係ないのだが、それを言っちゃおしまいで「まあな。他力本願の“負け上がり”じゃ喜びも半分ってとこだな。それにしても、暇な俺はともかく仕入れのある親爺が夜中まで起きているとは!」。遠野にすればパス回しの10分より親爺の行動にビックリだ。

美女二人はいつも通り床についたからライブ映像は観てないらしいが、<何が起きるか分からないから>と在社。結果と渋谷の様子を確認して会社で仮眠を摂った井尻は「初出場だった20年前は3戦3敗だったことを考えると、文字通り“隔世の感”がしますね」と。「俺もよ。コロンビアから2点取って勝ったと大騒ぎしてるから攻撃サッカーに結構期待してたんだ。それが、あのザマじゃあ」。親爺の文句と愚痴はまだまだ続いた。

口は動くが手と体が動いてない親爺に向かって「あら!おじさん。もうおくら(削り節とシラスの煮浸し)も心太(ところてん)も美味しく頂きました。今日のお勧めのお魚は何かしら?」。阿部秘書が「洗心」を遠野に注ぎ、自らのグラスを遠野に差し出しながら訊く。<サッカーの話題はオシマイ>の意が籠もっている。「それに、ホラ高にい、今日は局長との会食の結果報告があるでしょ」と梶谷。

すると例によって「いけねぇいけねぇ!」と禿げ頭を叩き、「とりあえず鮪と鰺、それに鰈(かれい)の刺し身を用意してっから」と言いながらカウンターに行き枝豆とキュウリの漬け物を運んできて座り込んだ。

すかさず阿部秘書が酌をする。「へへっ。すんませんねぇ」と喜び、一気に飲み干した。喋り過ぎて喉が渇いていたみたい。空いたグラスを阿部秘書に向け、お代わり催促しながら「このキュウリ旨いよ。まるで瓜みたいに太いだろ。これが石川産ってんで『菊姫』もあるからね。もちろん『洗心』だって。だから沢山飲もう」。サッカーの不満は完璧に消え去った。

「で、どうでした?局長は?」。報告する積もりではいたが、改めて阿部秘書から訊かれると、一瞬たじろぎ、「はい」と言うなりビールをグビリ。気を利かせた親爺が空いた瓶を手に立ち上がった。冷えた新しい奴に変えるのだろう。

「京子ちゃんが居ない時にちらっと聞いたんだけど甘方いわく『井尻は俺が最も頼りにしている3部長の内の一人』なんだって」。遠野が露払いをした。「凄い信頼じゃないですか。良かったですね」と阿部秘書が言い、山葵を鮪の赤身で巻いて口に入れた。「有り難うございます。色々と仕事ぶりも褒めていただいたし、自信というか、やる気がでてきたのは確かです」。井尻も落ち着いたのか滑らかな口振り。「あ、それに遠野さんについても『あの人にはもう少し居てもらい教育して欲しかったのに』と残念がっていました」。いかにも<遠野さんが思うほど悪い人ではないですよ>と言いたげだ。親爺と一緒で善人ではある。いや、単純か。「ほう、それはそれは」と遠野が茶化した。

「局長とはどちらへ。どうせならウチ(完庶処)にいらして頂ければ良かったのに」「あ、すみません。近くの小料理屋でして…」「井尻さんはやはりビールで、局長は焼酎ですか」。立て続けに訊く。「ええ。『これは旨いぞ』と局長が勧めるものですから私も一杯だけ焼酎を飲み、後はビールを」。井尻が言い訳気味に答えると「へぇ~。高にいが焼酎とはね」と梶谷。身内の気安さか、甘方に迎合した井尻に向けを蔑むような目をした。「だから一杯だけだって!それに、あの『壱岐』って焼酎は確かに旨かったし」。ムキになるところが面白い。

「あら。局長は芋より麦派ですか」と言い、キュウリの漬け物をコリッと噛み「洗心」で流し込んだ。皮肉っぽい笑みを浮かべたことに井尻は対面に居ながら気付いてない。さすがに梶谷も<はぁ~>てな感じで、こちらも酒を飲むしかない。甘方が「完庶処」で有村と一緒に「旨いですねぇ」と相槌を打ちながら「黒霧島」を飲んだことを知らない。

座の雰囲気がチョッピリ白けかけたところへ他の席に行ってた親爺が大きな皿を2枚抱えて戻ってきた。「いい虎魚(おこぜ)が入ってね。活作りだから早いもん勝ちだよ」と言いテーブルに置いた。美女二人は「綺麗!」「美味しそう」とはしゃぎ、早速、スダチを搾り、薬味のあさつきを小皿に取り分け、おもむろに虎魚の刺し身を摘まんだ。

満足げに眺めていた親爺だが「そうそう。あの席でも今朝の試合の話をしててな。『作戦勝ち』だの『西野の勝負感と決断力は凄い』『勝ってナンボ』とかの意見がほとんど。一人だけ『物足りなかったけど…』と懐疑的な人が居たが、結局は“良かった良かった”で乾杯さ」。またまた不満そうだ。

「これでベルギー戦に勝とうものなら日本中が大騒ぎ。懐疑的だった奴もあの10分を絶賛、今度はテレビはもちろん新聞も“西野!神対応”間違いなしだな」「勝てるの?」「そんなの分かるか。それこそ神のみぞ知るだよ」

「ねえねえ。いつまでサッカーの話をしてるんですか。ほら、今日は井尻さんのお祝いでしょ。ね!遠野さん」。意味ありげな口調で阿部秘書がボトルを傾けた。遠野は酌を受けながら思った。井尻が可愛がられるのは結構。しかし仲間、いや派閥作りに利用されているだけに厄介ではあり、甘方の狡猾さには恐れ入る。

<とかくメダカは群れたがる――か>。遠野の呟きが聞こえたのか、阿部秘書が箸を止め左の遠野を見上げた。


【著者プロフィール:源田威一郎】
大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。

斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。

競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

  • twitter
  • facebook
  • g+
  • line
閉じる 競馬JAPAN