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競馬コラム

心地好い居酒屋

2019年06月23日(日)更新

心地好い居酒屋:第69話

美女2人が参加した飲み会は久方ぶりとあって、21日の親爺の張り切りようは半端ではなかった。帰りしなに若い板前の吉野から聞いたのだが、材料はもちろん味付けの指示も細かく、お通しは親爺自らが腕を揮ったとか。


遠野を含めたた4人は打ち合わせたかのごとく、5分と間を置かず7時前後には全員が揃った。早速、仲居が「洗心」とビール、摘まみの枝豆と板わさを運んできて「とりあえず、これで」と。親爺は一度挨拶したっきりで板場から出てこない。


“ま、いいか”でそれぞれのグラスを満たし改めて「久し振り」と。皆んな笑顔だ。「ところで井尻さん!局長とのご関係は良好なんですって?」。珍しく美人秘書が口火を切った。「ええ、まあ。いろいろご心配おかげしましたが、気分良く仕事させてもらってます」。井尻が答えると同時に親爺が人数分の器で「沢蟹」の素揚げを、仲居が「ジュンサイ」を持ってきて並べた。ついでに親爺は座り込んだ。


「綺麗!」。真っ先に梶谷が声をあげた。赤い2匹の蟹の足はちゃんと整えられており、丁寧な仕事振りが見てとれる。続いて美人秘書が「ジュンサイがこんなに鮮やかな緑色だったとは」とビックリの様子。盛り付けなどお構いなし、枝豆でビールを呷っていた井尻が最初に沢蟹を口に入れた。ガリガリの音の後「旨い。初めてです」。ジュンサイから箸を付けたお嬢たちは「味はもちろんですがこのツルンとした舌触りと細やかなコリコリ感のバランスが絶妙ですね」と親爺に顔を向ける。


「何が嬉しいったって京子ちゃんとおまさちゃんに褒めて貰えるのが一番だね」。親爺が照れ気味に、しかし満足気にハゲ頭をたたいた。


「私、イカリングの時みたいに吉野さんに蟹とジュンサイのレシピ訊いておこうかな」。梶谷が独りごちたが、親爺は素知らぬ態で、美人秘書の酌を受け、「刺し身は鯛、鮪に鰺ってところかな。良かったら鰯のナメロウも作るけど…。どうする?」「焼き物は?」と梶谷。「あ、それは今朝上がった太刀魚を準備してるから」「なら、今のところはいいんじゃない“梶”」「そうね。阿部さんにお任せします」。美女2人は蟹の殻と骨を酒で流し込んでいるようだ。


「京子ちゃんは知らないけど、井尻への寵愛は繰り上がりみたいなもんでね。甘方が編集で可愛がっていた奴が大ドジをこいちゃって」。遠野が冷やかし気味に言い、金山の醜態を説明した。「ふ~ん。<類は友を呼ぶ>ってことですか。と同時にさすが局長、<機を見るに敏>ですね」。美人秘書が納得し親爺にグラスを差し出し酌を促す。頼まれた親爺は大喜びで「どうぞ」とボトルを両手で持ち上げた。この和みと雰囲気が彼女の息抜きになっているのは間違いない。


ところが井尻が反論した。「雅子もそうだけど阿部さんや遠野さんが思っているほど局長は悪人じゃありませんよ」「しかし善人でもない」「……」。遠野の言葉に黙り込んだ井尻を見て美人秘書が瓶ビールのお代わりを頼み、井尻の言葉を待った。


「最近話す機会が増えて…。この間も遠野さんの話題が出た時なんて『あの人が室長で居てくれたら社内の空気も締まり、原稿チェックも行き届いたと思うぞ』と残念がっていましたし『会ったらよろしく』とも」。聞いた遠野は思わず噎せた「ゴホッゴホッ」と苦しそうに手を振り「ジ・ョ-・ダンはや・やめてくれ。ゴホッ」。気管に酒が入ったようだ。美人秘書が背中をさすり、梶谷が水を用意してくれた。噎せるのも悪くない。


「ふ~。ありがとね。井尻がそう判断するんならそれはそれでいい。ただあいつだって俺の携帯は知ってるしな。本当に慕ってるなら電話一本はあるだろ。それに、俺とお前がたまに会ってるのは知ってるし、そういう奴には俺の批難、批判はしない奴だから。いずれにせよお前の良心を信じてるよ。くれぐれも取り込まれるな!それとあいつの前で俺を褒めたりする必要はないぞ」。一気に喋ったせいで喉も渇き、改めて冷酒に口を付けた。


タイミング良く刺し身が届き好みの肴を摘まんだのを見計らい親爺が口を開いた。「年金は一体どうなるんだ。京子ちゃん、おまさちゃんは若いからピンとこないかも知れんが酷いやり方だよな」。憤っている。


「麻生が報告書を受け取らなかったのはともかく、後は茶番だよ茶番。要するに年金をアテにするな。貯金をはき出し投資に回せ。最低でも70まで働け。金のない奴は物価の安い田舎に引っ込め-。ってことだな。見ててみ。お上の意向に沿って今後はテレビも新聞も“投資法”だの“驚きの75歳現役”それに“損をしない田舎の選び方”なんて特集が増えてくるから」「冷めてるねぇとのさんは」「腹は立つけど折角美女がいるのに“床屋談義”に時間を費やすのは勿体ないだろ」。遠野はそう言った後、気がついた。


「そうだ。京子ちゃんの所はしっかりしてるらしいけど、おまさちゃんは大変だよ。都市銀行に居れば企業年金もあるのに『TMC』なんて基金の積み立てなしだろ…。余計なことだけど、やっぱり『TMC』への転職は不可解だよホント」。遠野が真面目な顔をして首を捻った。


「有り難うございます。でも、大丈夫です。楽しんでいますから」。梶谷がニコッと笑い「ね!阿部さん」と。「あのね。“梶”はFP(ファイナンシャルプランナー)を始め、他の資格も持ってるし、割のいい再就職先はいくらでもあるんです」。美人秘書が続け「隠す積もりはありませんでしたが、黙っててごめんなさい」。2人して頭を下げた。


「そうかぁ。年金は減らされ、保険は増えそうだし、人のことより自分達の今後を心配した方が正解かも」「そうだな」。親爺も頷く。頭を下げた2人と神妙な親爺を見た遠野は「いけねぇ。『ダービー』はハズしてごめん。これで勘弁を」と頭を下げ「洗心」のボトルを取り上げた。


「そんなのぉ~。止めて下さいよ。ワクワク、ドキドキで、十分興奮しましたから」。美女2人が手を振った。「これじゃあ“馬券FP”失格だな」。遠野がふざけると「国が投資を勧めるのは結構ですが、無責任な会社やFPは沢山居るし、これから投資の被害者が増えるんじゃないかと…」。梶谷が眉を顰めた。


「馬券投資で『宝塚記念』はどうする?」「親爺のマカヒキは分かってるけど俺はケンだな。お嬢達の馬券もハズれたし一息入れた方がFPとしては賢明だろ」 「去年からのトータルでは儲かってますからご安心を」。本物のFPが締めた。


源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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