競馬は、戦いというか競争なので、敵に進路を譲るということは基本的にはありません。というよりも、そういうことはないはずです。しかし、ハナに行きたくない場合、ハナを主張している馬に先手を譲るということは日常的にあります。ただ、その譲り方にも駆け引きが必要だと思っています。
先週行われた大阪杯は、千メートル通過が61秒1というスローペースになりました。逃げたヤマカツライデンの酒井学騎手がペースを落とし過ぎたという面もあると思いますが、後続からのプレッシャーがなければペースを落としたくなるのは逃げ馬の性。だから、ペースを握るのは番手につけた馬とよくいわれるのです。
そう思ってレースを見直すと、好スタートを決めた幸騎手のサトノノブレスが、その外から先手を主張するヤマカツライデンを先に行かせて番手につけようと狙っているようにみえました。ただ、そこで馬にブレーキをかけてしまったので、ヤマカツライデンは労せずハナへ。一方の幸騎手は、外から勢いのついた馬に次々と交わされて、番手どころか中団付近までズルズルを下がってしまったのです。
このように、逃げ馬に塩を送って、自分を窮地に追い込んでしまっては意味がない。先手を譲る姿勢を見せながらも、逃げ馬にはハナを獲り切るまでに脚をできるだけ多く使わせる意識が必要だと思うのです。そうすれば、相手は加速するので(自分は加速する必要がないから)自分の前にスペースもできてレースを有利に運べる。
引退されたアンカツさんが、そういう部分での駆け引き(「お先にどうぞ」という雰囲気を醸しながら、相手の脚を消耗させる)が抜群に上手かったと記憶しているのですが、最近のジョッキーはそういう駆け引きが下手な印象。こういう駆け引きの技術も競馬学校等で教えることはできないのでしょうか。
樋野竜司
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。