今年の春の天皇賞の主役は、ある意味では藤岡佑介騎手だったのかもしれません。
ずーっとコンビを組んできたクリンチャーとは京都記念制覇を最後にコンビ解消となってしまいました。しかし、有力なお手馬を失ってしまったかと思われましたが、日経賞をガンコで制し、すぐに次なる天皇賞・春の有力候補を手に入れたからです。
期待されたガンコは14着と結果は振るいませんでしたが、藤岡佑騎手の地味なファインプレーがレースを面白くしたと思っています。というのは、馬をリズムよく気分よく走らせて能力を存分に引き出すのと同じくらい、相手の長所を消し、思い通りにさせない騎乗も重要だと考えているからです。
オセアニアの騎手はどんなレースでも「インの3番手」がベストポジションと考え、常にそこを狙ってきます。ボウマン騎手がシュヴァルグランを勝利に導いた昨年のJCも思い通りのポジションが取れたのが大きな勝因でしょう。というわけで、ここも「インの3番手」を狙ってくることは想像できました。そして、1番人気のシュヴァルグランにそのポジションを明け渡すことは勝ちを譲るのに等しい行為だと思うのです。
抜群のスタートを決めて狙いのポジションを獲りに行ったボウマン騎手に対し、藤岡佑騎手は絶対にラチ沿いには入れてはならないと、内で懸命にブロック。結局、内に入る隙を与えず、内に入るのをあきらめさせることに成功したのです。
その藤岡佑騎手の動きがあったからこそ、あれだけ見ごたえのあるレースになったと思うのです。

樋野竜司
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。