先週終了時点で、今年100鞍以上騎乗している騎手のうち単勝回収率がもっとも高いのは川須騎手(163%)。テーオーキャンディ、コパノケネディーの単勝万馬券二発が利いてトップに立ちました。
ただ、この2回を除くと単勝回収率は58%まで下がってしまいます。単勝回収率は大穴一発あるかないかで大きく数字が変動するので、1年程度の数字では実力を反映しているとはいいにくいのが難点です。
一方の複勝回収率は穴馬でも10倍を超えることがなかなかないので異常な高い値が出にくく、より実力を反映した数字といえます。そこで今年100鞍以上騎乗している騎手のなかで複勝回収率の高い騎手を見てみると、坂井騎手と新人の団野騎手が120%で並んでいます。
さらに、競馬データベースソフトのターゲットで調べられる単適回値という数字をみると、141.3%で団野騎手がトップ。
単適回値とは、単勝適正回収値の略。どういうものか簡単に説明すると。
例えば、単勝100倍の馬と単勝1.5倍の馬に騎乗し、両方勝った場合の単勝回収率は5075%ですが、もし単勝1.5倍の馬で取りこぼしたとしても単勝回収率は5000%となり、いくら人気で取りこぼしても穴で勝てば高い数字が出てしまう。この単勝回収率の問題を解消し、より実力を反映した数字に近づけるために開発されたものです。
その中身は、常に払い戻しが1万円になるように購入した場合の回収率。こうすれば単勝万馬券の馬で勝とうが、単勝1.5倍の馬で勝とうが払戻額は同じなので、大穴で勝っても数字が跳ねることもない。しかも、購入額が違う(100倍の場合は100円で済むが、単勝1.5倍だと約6666円購入しないといけいない)ので、人気馬で取りこぼすと回収率が大きく下がる。こうすることでより騎手の実力を反映した数字になる。
というわけで、単勝回収率は67%しかない団野騎手ですが、それは騎乗馬の大半が人気薄の可能性に低い馬だからで、可能性のある馬に騎乗してきたときは確実に期待に応えているといえる。実質的には単複回収率トップの二冠ジョッキーといえるのかもしれません。
先週の2勝で跳ね上げたものですが、新人騎手が成長の幅が大きいので今週の騎乗ぶりにも注目してみたい。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。