有馬記念はリスグラシューの圧勝劇に終わりました。一方で、単勝1.5倍の圧倒的な1番人気に支持されたアーモンドアイは9着に沈むという結果に。ただ、空前の豪華メンバーが集結した一戦にも関わらず天皇賞(秋)よりも単勝支持率が上がったのは意外でした。それだけ大きな期待を集めていたということなのでしょうが……。
レースでもアーモンドアイの存在の大きさを知ることとなりました。
というのは、アーモンドアイが出てこなければ、おそらく1番人気になったのはリスグラシューのほうでしょう。なので、もともとはリスグラシューが受けていたと思われる他馬の厳しいマークが、すべてアーモンドアイのほうに向けられ、リスグラシューはまったくのノーマークで競馬をすることができたからです。
一緒に騎乗しているジョッキーもアーモンドアイをどうにかして負かしたいという気持ちが強かったのかもしれません。なかでもフィエールマンに騎乗した池添騎手のアーモンドアイへのマークはとくに厳しかった印象です。
ただ、負けるときは得てしてそういうものなのかもしれませんが、鞍上のルメール騎手にいつもの自信がなかったようにも見えました。1週目のホームストレッチで折り合いを欠いたことがその後のプランを狂わせたのかもしれないですが、それも鞍上の変化を馬が感じ取ったからかもしれません。しかも、ハイペースの縦長の展開になって自ら逃げ馬を捕まえに行く形になったのも影響したように思います。
昨年の秋華賞では逃げ馬と大きな差があっても全く慌てるそぶりを見せなかったし、これまで厳しいマークにあっても涼しい顔で巧みに交して来たルメール騎手ですが、有馬記念の騎乗からはそういう余裕が見られなかった気がします。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。