先週日曜の東京9Rヒヤシンスステークス。圧倒的な1番人気に支持されたカフェファラオがスタートで出遅れ、場内がどよめきました。しかし、レースリプレイをよく見ると、鞍上のデムーロ騎手は手綱を引いて最後方からレースを進めようとしているようにもみえ、出遅れは作戦のうちだったのかもしれません。
この時期のダートの上級条件は逃げ先行策で勝ち上がってきた馬が多く先行争いが激しくなりやすい。しかも、カフェファラオのように人気を背負った馬が先手を主張すると後続のいい目標になってしまう。一方で、行き切れず控えることになった場合には、砂を被って力を発揮できないケースも考えられます。
揉まれずに競馬できれば能力で圧倒できるという自信があったからこそ、敢えて下げて揉まれない競馬に徹したのかもしれません。狙い通りか、そうじゃなかったのかはデムーロ騎手本人にしかわかりませんが、揉まれず競馬することができたことで圧勝することができました。
この日のメインのフェブラリーステークスを勝ったのはルメール騎手が騎乗したモズアスコットでした。
芝からダートに路線変更して2連勝となったのですが、ここで注目したいのは初ダートとなった根岸ステークスでのレースぶりです。というのは、カフェファラオ同様に出遅れてしまったのですが、ルメール騎手は敢えて馬の後ろに入れて砂を被る経験をさせていたように見えたからです。そこで砂を被る経験ができたことで、フェブラリーステークスでは中団のインでジッと脚を溜めることができたのでは。
1、2レース取りこぼしたとしても圧倒的な「政治力」が揺らぐことのないルメール騎手と1鞍1鞍が「政治力」回複のために重要なデムーロ騎手の置かれた立場の差が、騎乗の違いとなって表れたと思うと、興味深いですね。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。