天皇賞春はルメール騎手が騎乗したフィエールマンの連覇という結果に終わりました。ここでは、そこで6着だった武豊騎手とキセキのコンビに注目してみたいと思います。
阪神大賞典で大出遅れをしてしまいゲート再審査明けだったので、そのスタートに注目が集まったのですが、そこは難なくクリア。ただ、その先にも多くの難しい課題があったように思えたからです。
近年、凱旋門賞に挑戦するためにフランスに長期滞在した馬は、走り方が変わってしまうのか、日本で走っていた頃のスピードや切れ味が鈍る傾向にあると思っています。その反面、脚の持続力は増しているのかもしれないですが、特徴がなくなってしまうような気がしてなりません。
というわけで、天皇賞で好走するためには後続に大きなリードを作って直線に向き持続力を活かす競馬しかないと思っていました。ただ、向こう正面でリードを作るとなると向かい風に加え上り坂もあるので脚の消耗が激しすぎる。だから、それを実現するためには追い風のホームストレッチで後続にリードを作るしかない。
1周目のホームストレッチ。馬を押さえきれない感じでキセキを外に出して、先頭を奪ったのはそういう狙いがあったのではないかと思っています。ただ、フランス遠征する前の軽快な走りを見せることができず、向かい風の向こう正面で強引に後続を引き離すような自ら厳しい競馬強いることになってしまった。
レースの流れを考えるとよく粘っているといえますが、武豊騎手の手腕をもってしても持ち味を活かすのが難しいと感じた一戦でした。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。