先週行われたローズステークスは3連単113万馬券という大波乱の決着となりました。
今回は7番人気のフィオリキアリに騎乗した北村友騎手と11番人気の伏兵オーマイダーリンを2着に持ってきた和田騎手の騎乗ぶりに注目しながら波乱の原因を探っていきたいと思います。
騎手間の暗黙のルールのひとつに、ラチ沿い一頭分スペース開けて競馬をするというものがあります。
レース中にアクシデントが起きたとき、逃げ場がないと大事故につながりやすくなる。そうならないようにあらかじめ逃げ場を作っておくためです。
それ以外に、もう一つ理由があると思っています。
それは前の馬がバテて下がって来たときに詰まらないように、あらかじめバテて下がってくるスペースを作っておくという狙いです。
ローズステークスで逃げが予想されたのはこれまでスプリント戦を中心に使われてきたエレナアヴァンティや1勝クラスから格上挑戦のヤマニンプティパだったので、距離が長すぎたり、力が足りなかったりで、バテて下がってくることを予測しながら競馬をしなければならなかった。
人気馬の多くが早めに外を回る競馬を選択した理由の一つは先団を固める馬が勝負どころでバテて下がってくる恐れがあったので、それに巻き込まれて不利を受けないためでしょう。
それを頭に入れてローズステークスのパトロールを見ると、向こう正面で内ラチを開けて競馬をしているのが確認できます。
注目のポイントは3コーナーです。
というのは、そのまま内を開けて競馬をすると距離ロスが生じてしまいます。だからといってラチ沿いを走るとバテて下がって来た馬に進路を塞がれる恐れがある。
フィオリキアリに騎乗していた北村友騎手は詰まるリスクを避けるために内を開けたままにし、そのスペースに入ってきたのが和田騎手のオーマイダーリンだったのです。
しかし、直線に向くとコーナーではラチ沿いを走っていたヤマニンプティパが4コーナーで外に膨らみ、北村友騎手の進路を塞ぐ形となり、和田騎手の進路がポッカリと開いたのです。
先団を固めた馬がペースを上げることができなかったので、後ろから外を回って差すのは難しく、一か八かでインを突くしかなかったと思うのですが、そこでの選択でも明暗が分かれた。そういう不確定要素が大波乱を引き起こしたように見えました。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。