世代を超えた3頭の三冠馬の激突で、世紀の一戦とレース前から大きな注目を集めたジャパンカップは、これが引退レースだったアーモンドアイが貫録を見せる結果となりました。これで芝GⅠ9勝目。獲得賞金でもキタサンブラックを抜いて歴代1位に躍り出ました。
レースを振り返って。筆者が注目したポイントは、「アーモンドアイに跨ったルメール騎手のコース取り」と「ヨシオの動き」の2点です。
この秋の東京開催は雨に祟られることも多く、例年に比べると時計のかかるタフな馬場状態でした。
内目の芝は映像で見ても荒れているのがわかります。ただ、直線で馬場のいい外目に持ち出すのは当然としても、3、4コーナーの勝負どころで内を回るか、コースロスを覚悟で馬場のいい外を回るかは判断が分かれるところでした。
さらに、ジャパンカップが行われる芝2400mはCコースになってから3レースしか組まれていないので、1、2コーナーのインはレースで使われておらず絶好の馬場状態。そこも考え合わせると悩ましい。1、2コーナーではインを回るのが圧倒的に有利でも、内を選択して一旦隊列が決まってしまうと、そこから進路を変えるのは難しいからです。
そういう状況を総合的に判断してルメール騎手はインで競馬することを決断したのではないでしょうか。
1、2コーナーでインを回るメリットが大きいし、3、4コーナーも下が悪いとはいえ最短距離を走れるぶんで相殺できると。
もうひとつのポイントはヨシオの動きにあったような気がします。
1コーナーで内からキセキに行かれて、逃げることを諦めてから鞍上は他馬の邪魔にならないように意識していたのではないでしょうか。なので、向こう正面でも内を開けて外目で競馬していました。
しかし、3コーナーでバテて下がってきたときにレースが動いたからです。コーナーなので外を走るとそれだけ余計に距離を走らないといけない。
道中カレンブーケドールとデアリングタクトは並んで走っていたのですが、ヨシオをパスするときに、内を回っていたカレンブーケドールがコーナーワークの利で外からヨシオを交わしたデアリングタクトの前に出たので、その瞬間に津村騎手が動いていったからです。ゴールでの差をみるとこういう部分でのちょっとしたビハインドが結果に大きく影響したのではないでしょうか。
また、コントレイルの福永騎手のように徹底して馬場のいい外目を通るという狙いや、ルメール騎手のように総合的に判断してインを選択と騎手の戦略も対照的。また津村騎手のように1、2コーナーではインにこだわり、3、4コーナーで隙を見て外に出す、馬場のイイとこ取りするような進路取りも印象的でした。
好メンバーが集まったレースが名勝負になることは意外と少ないですが、今年のジャパンカップは評判に違わぬ名勝負になったと思います。
「競馬成駿」はコチラ!


樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。