前回取り上げた川田騎手は、懸念が悪いほうに当たってしまいリーディングの座をルメール騎手に奪われてしまいました。
ただ、ルメール騎手は今週末の騎乗予定がなく、毎年恒例の夏のバカンスに出かけたのかもしれません。とはいえ、これは仮に川田騎手にリーディング争いで差し返されても、最終的には勝てるという余裕の表れのような気がしてなりません。
先週の宝塚記念もルメール騎手が騎乗したイクイノックスが圧倒的な人気に応えて完勝しました。ここでは2番人気のジャスティンパレスに騎乗し3着に敗れた鮫島駿騎手に注目して見たいと思います。
ジャスティンパレスは、ルメール騎手とのコンビで天皇賞・春を制し、人気的にもイクイノックスの逆転候補の一番手でした。ルメール騎手もこの馬が一番のライバルと思っていたようで、道中はこの馬をマークする形でレースを進めました。
鮫島駿騎手にとってこれは事前の読み通りだったようで、3番人気のジェラルディーナが仕掛けてレースが動き出したあとも、動き出しを一呼吸待ったとレース後にコメントしています。後ろにいるイクイノックスの仕掛けを遅らせることができるし、ルメール騎手が焦って先に動いてくれれば自分の馬のチャンスも広がるからでしょう。
さらに、4コーナーではしびれを切らして大外に持ち出したイクイノックスに合わせて動いて、大きく外に膨らませることで距離を余計に走らせることにも成功。自分もロスの大きいコーナーワークになってしまったのですが、それでもイクイノックスほどではなく、負かすべきライバルはイクイノックス一頭と決め打っていたからこそできた作戦でしょう。
ただ、直線に向いてからの伸びはイクイノックスが圧倒的で、ジャスティンパレスは3着まで追い上げるのが精一杯でした。
レースリプレイをよく見てみると、鮫島駿騎手は直線に向いた時点でムチを落としています。ムチが使えなくなってしまったぶん、馬の反応が悪くなった可能性も考えらせます。
クレバーな騎乗が持ち味といわれる鮫島駿騎手ですが、宝塚記念の結果をどう考えているのか、もっと詳しく知りたくなりました。ムチを落とさなければもっと際どい勝負に持ち込めていたような気がしてなりません。
「競馬成駿」はコチラ!
樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。