前回取り上げた坂井瑠星騎手、先週のチャンピオンズカップを、レモンポップとのコンビで逃げ切りました。
初の1800mという距離に加え、コーナー4回のレースを経験するのも初めて。加えて、これまで死に枠となっていた大外枠の不利を跳ね返しての勝利。
最終的には1番人気になったとはいえ、単勝で390円も付けたのは馬券ファンも簡単なレースではないと考えていたからでしょう。
筆者も距離に関しては不安をぬぐい切れなかったので、レモンポップが出走するレースで初めて本命以外の印を打ったのですが、それは杞憂だったようです。
スタートは外にヨレ気味で好スタートとは言い難いものでしたが、ダートの短距離でも楽に先行できるスピードの持ち主なので、二の脚の速さは圧倒的。すぐに加速してハナを奪うことができました。1コーナーを先頭で回れた時点で、坂井騎手の仕事の9割は終わったのではないでしょうか。ハナを奪ってしまえば、距離が長くてバテる以外で負けることはないからです。
距離で負けるとしたら、仮に1枠1番でも同じこと。うまく課題を切り分けて作戦を構築したのが好騎乗につながったと思っています。
一番ダメなパターンは、距離と枠という課題を一緒にしてしまって、距離を持たすためにゆっくりスタートを出すなど、いろいろ組み合わせた結果、中途半端なレースになること。まずは枠順の不利を馬の長所を活かして好枠に変えるため、一気にハナを奪って距離損のないラチ沿いを獲ったのが何よりも好判断だったと思うからです。
勝ちタイムやレースぶりから、距離は長かったと思うのですが、課題を切り分けた好騎乗が勝利につながったのは間違いないでしょう。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。