先週の根岸ステークスは、川田騎手が騎乗したエンペラーワケアの圧勝でした。
根岸ステークスは、逃げ馬にとって鬼門となっているレース。
逃げ馬が馬券に絡んだのは08年のタイセイアトム(5番人気2着)が最後で、それ以降は3着すらなく【0-0-0-16】という惨憺たる状況です。
そういう傾向は騎手もよく知っているのではないでしょうか。ダート短距離の重賞にもかかわらず激しい先行争いはなく、武豊騎手のヘリオスは前半3ハロン35.8秒、1000m通過60.6秒という、冬場のタフなダートだとしても遅い流れでマイペースに持ち込んで逃げることができたからです。
どのジョッキーも逃げたくないと考えており、そういう意識の積み重ねがレースの流れに反映されているのではないでしょうか。
過去にも似たようなレースがありました。
暮れに行われるカペラステークスも、レース創設以来逃げ馬が全く振るわないレースでした。7回目にようやくダノンレジェンドが逃げ切って逃げ馬の呪縛を解いたのですが、その前年は前半3ハロン34.3秒という未勝利戦でも遅いくらいのペースになっていたのです。
逃げ不利が浸透して誰も逃げたくないためこういうことになったと思うのですが、今年の根岸ステークスからも同じようなニオイがするのです。
実際、逃げたヘリオスは負けたとはいえ4着に粘っており、武豊騎手も騎手心理を逆手にとって逃げたのではないでしょうか。気の早い話ですが、来年の根岸ステークスは逃げそうな馬に注目してみようかと思っています。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。