先週のNHKマイルカップを制したのは、2番人気のジャンタルマンタルに騎乗した川田騎手でした。
一方、1番人気のアルコリピチェーノに騎乗したルメール騎手は、直線で行き場を失い2着を確保するのが精一杯でした。
今回は、物議を醸した直線でのルメール騎手の進路取りについてクローズアップしてみましょう。
裁決によると、最後の直線コースで9番キャプテンシーと5番ボンドガールの進路が狭くなりました。
これは、15番マスクオールウィンと14番アスコリピチェーノが内側に斜行したことが原因でした。この件について、マスクオールウィンの騎手岩田康誠とアスコリピチェーノの騎手C.ルメールに対し、それぞれ過怠金30,000円が課されました。
以前のコラムでも取り上げたように、今年の川田騎手はルメール騎手に思い通りの競馬をさせないように徹底しており、ルメール騎手包囲網とも言える状況が続いています。
そのため、ルメール騎手と川田騎手が同じレースに騎乗すると、ルメール騎手の成績が落ちる傾向があるのです。これがルメール騎手の心理にも大きな影響を及ぼしていたのではないでしょうか。
今回のレースでも、直線に向いた時点で、川田騎手はルメール騎手のアスコリピチェーノを外に出させまいとブロック。これ自体はクリーンな戦略の範囲内でしょう。しかし、ルメール騎手からすると、これまで刷り込まれた記憶もあるため、川田騎手がいる方の外に出すことを諦め、内を狙うと咄嗟に判断したのだと思われます。
そのタイミングでキャプテンシーがバテて下がってきて進路ができそうだったので、すかさずそこを狙ったところ、前のマスクオールウィンもほぼ同時のタイミングで内に刺さってスペースがなくなり、ゴチャついてしまったのです。
つまり、川田騎手の騎乗がルメール騎手に心理的な圧迫を与えたことが、今回の進路取りに影響を及ぼした可能性があるのです。
ルメール騎手は、世界トップクラスの騎手であることは間違いありません。しかし、川田騎手の巧みな戦略に翻弄され、思うような競馬ができなかったのかもしれません。
今後、ルメール騎手がこの包囲網を打ち破るためには、心理的な側面も含めた対策が必要になるでしょう。二人のトップジョッキーの戦いは、まだまだ続きそうです。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。