福島県二本松市出身の田辺裕信騎手が、夏の福島開幕週に行われたラジオNIKKEI賞において、見事な騎乗で重賞制覇を果たしました。
6番人気のオフトレイルに騎乗し、圧巻の追い込みで、コースレコードタイとなる1.45.3秒という好タイムで優勝を飾ったのです。
この勝利は、田辺騎手の冷静さと柔軟な判断力を如実に示すものでした。
スタートの出遅れにより、当初の作戦とは異なる最後方からのレースを強いられたにもかかわらず、田辺騎手はこの状況を冷静に判断。
一般的には、開幕週のレースは逃げ先行有利。ただ、それはどのジョッキーも意識しているのでハイペースになりやすいもの。激しい先行勢を尻目に、道中は周りに惑わされることなく自分の競馬に徹することで、直線で大外から一気に10頭を抜き去る鮮やかな騎乗を披露したからです。
勝利ジョッキーインタビューも田辺騎手らしさが全開でした。
インタビュアーの「昨年の福島記念以来の重賞制覇。福島に来ると燃えますか?」という質問に対し。「冷静にしているつもりなんですが、そうなんですかね?普段やる気ないみたいなんでやめてください」といった冗談交じりやりとりや、当初の作戦と違う競馬になってことに対して「指示守らないこともいいことあるなあと思って。スミマセン」という謝罪も。
こういう田辺騎手の気負わない感じが、ハイペースのレースでも周りに惑わされることなく自分の競馬に徹する余裕につながっていて、直線での爆発力を引き出したのではないでしょうか。らしさの詰まった重賞制覇だったと思います。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。