先週のオークスは、4番人気のカムニャックが見事な勝利を収め、騎乗したシュタルケ騎手が鮮やかな手綱さばきを見せました。
そのオークス、筆者が特に注目したいのは、10番人気ながら3着に入ったタガノアビーと藤岡佑騎手の騎乗ぶりです。
オークスというレースは、3歳牝馬にとって2400mという未知の距離が試される苛酷な条件。能力やスピードだけではなく、最後までしっかり脚を使い切れることが求められます。具体的に言うと、上がり最速を出せる馬が強い――それがこのレースの本質です。
藤岡佑騎手は、もともと上がり最速を叩き出すことにかけては定評がありました。しかし、その反面「また4着か」と揶揄されることも多く、「1着を狙ってない」「上がり最速を出すための競馬をしている」などといった声も聞かれる存在です。
そんな藤岡佑騎手にとって、オークスのレースの性質はむしろ追い風になると筆者は考えていました。
今回筆者がタガノアビーを本命に据えたのは、まさにこの点です。
矢車賞で33.3秒という強烈な上がりを見せていたタガノアビーなら、道中の位置取りがどうであれ、最後にその決め手を最大限に活かしてくれるだろう。藤岡佑騎手の特性と馬の持ち味がかみ合えば、おのずと上位に食い込めるはずだと信じていたのです。
レースでは案の定、タガノアビーは最後方からの競馬になりましたが、それでいいと思っていました。直線ではポッカリと空いたインを突き、持ち味を余すことなく発揮。33.5秒というメンバー中最速の上がりで一気に馬群を抜け出し、見事3着に飛び込んだのです。
タガノアビーの激走は、単なる波乱ではありません。ジョッキーの得意技とレースの性質が見事に合致し、結果として形になった好走でした。これこそが競馬の面白さであり、ジョッキーそれぞれが持つ馬券妙味ではないでしょうか。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。