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競馬コラム

樋野竜司:今週の政治騎手

2025年06月20日(金)更新

【武豊騎手】“折り合い”という言葉の意味



先週の宝塚記念を制したのは、武豊騎手が手綱を取った7番人気のメイショウタバルでした。

その逃げ切りは見事というほかなく、まさに“完勝”と言ってよいレースぶりでした。

舞台は阪神芝2200m。1000m通過は59.1秒と、速すぎず遅すぎずの絶妙なペースで流れました。武豊騎手ならではの芸術的なペースメイクで、後続勢からすると捕まえにいく隙がなく、気がつけば脚も溜めることができないままゴールを迎えることとなりました。

メイショウタバルは、爆発力と同時に気性の難しさも抱えるタイプの馬です。
そのような個性を持つ馬をいかにして御すか──多くの騎手にとって悩ましいテーマですが、武豊騎手は勝利ジョッキーインタビューでそのコツをさらりと明かしてくれました。

「ある程度、折り合いはついていましたし。かといって、折り合いがつきすぎているわけでもない。」

この言葉は非常に印象的でした。他の騎手であれば「行きたがっていた」「引っかかった」といった表現を用いる場面かもしれません。しかし武豊騎手は、あくまで「折り合い」という言葉を選びました。そこには、馬の意思や特徴を理解し、尊重したうえで、競馬を組み立てていこうという姿勢がにじんでいます。

「行きたがる」と表現すれば、人が馬を操作する印象が強まります。しかし「折り合い」という言葉には、あくまで“歩み寄り”というニュアンスがあります。メイショウタバルの気分を尊重しつつ、勝負になるペースにまとめる。そんな人馬一体の騎乗が、今回の勝利を引き寄せたのではないでしょうか。

もちろん、阪神芝2200mのコース形状──スタート直後に急坂があり、すぐにカーブを迎える特殊なレイアウト──がペースを落ち着ける手助けをした可能性もあります。しかし、それ以上に光ったのは、馬と向き合い、気持ちを理解し、巧みに導いた武豊騎手の戦略力でした。

年齢を重ねてもなお、新たな名騎乗を見せてくれる武豊騎手。その手綱さばきと、言葉のひとつひとつから、競馬の奥深さと美しさを改めて感じさせられる一戦でした。

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樋野竜司

HINO RYUJI

1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。

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