先週の日曜函館4R(芝1800m)。好スタートを決めて先手を奪ったのは、武豊騎手が騎乗した1番人気のシンヒダカゴールドでした。
しかし、2コーナーを回ったところで、4番人気のハクサンミラクル(小林美駒騎手騎乗)が一気に加速して先手を奪います。
雨の影響で馬場は重。にもかかわらず、1000m通過は58.0秒というハイペース。さすがにこのペースは無謀すぎたのか、ハクサンミラクルは直線で失速し10着に沈みました。武豊騎手のシンヒダカゴールドも、このハイペースに巻き込まれる形となり、11着と人気を裏切る結果に。
もちろん、どう動くかは騎手の自由。ですが、このケースは「武豊騎手を意図的に潰しにいったのでは」と勘繰られても仕方がない騎乗だったと言えるでしょう。
小林美騎手は、平場では★(4キロ減)の減量特典があります。その恩恵を最大限に生かすため、果敢に逃げの手を打つタイプです。
もっとも、逃げる理由は減量だけではないのかもしれません。というのも、小林美騎手のエージェントは、同じく函館で有力馬に多数騎乗している横山武史騎手と丹内祐次騎手も担当しています。自ら逃げて粘ることがAプランだとしても、後ろの有力馬──すなわち横山武騎手や丹内騎手のアシストとなるBプランが存在している可能性もある。だからこそ、ときに「無謀」とも思える逃げを打つ場面があるのではないか……そんな見方もできます。
そしてこの日のメインレース。
小林美騎手はハンデ52キロの逃げ馬マキアージュに騎乗。一方の武豊騎手も、逃げがベストのナムラローズマリーに騎乗していました。
このレースでは、武豊騎手は一旦、小林美騎手にハナを譲ります。しかし、その直後に外へ持ち出してハナを奪い返しました。傍目には「小林美駒を潰しにいった」ようにも見える積極策。
ですが、ここには武豊騎手なりの教育的意図があったのかもしれません。
──「自分がやられたときにどう感じるのか?」
それを小林美騎手に“体験”として教えたかったのではないでしょうか。
ここから先の注目は、小林美騎手がどう変化するか。
思い直して戦法を修正するのか。
あるいは「やられたら、やり返す」とばかりに、さらに過激なスタイルへと突き進むのか。
函館での争いは、まだまだ熱い火花を散らしそうです。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。