プロキオンS出走前の待避所での輪乗りを見ていて驚くことがありました。というのは、砂のキックバック除けとして、ダート戦では『透明の下敷きのような板』をつけて騎乗するのが通例となっているのですが、ノボバカラに騎乗したM.デムーロ騎手だけそれをつけていなかったからです。
さすがに付け忘れたということはないと思うので、「砂を被る気はない」という意思表示だったのではないでしょうか。何が何でも先行して絶対に引かないと最初から決めていたのかもしれません。
レースは好スタートを決め、押して押して外の3番手につける。実力馬揃いのダート重賞なので、前半3ハロンは34秒1と締まった流れになったのですが、3コーナー入ると息を入れるどころか自分から仕掛けてダノングッドを交わし2番手に上がります。残り200で逃げるワンダーコロアールを捕えると、そのまま押し切りました。
1ハロン毎のラップの推移をみると。
12.2→10.7→11.2→11.3→11.8→12.0→12.9
デムーロ騎手が動いたのは、本来ならば息を入れたい4ハロン目。そこで11秒3という厳しいラップを刻みながら押し切ったわけで、ノボバカラの強さが際立ったとも言えますが、それを引き出したのは、下敷きを捨てたデムーロ騎手の覚悟だったのではないでしょうか。
不測の事態に備え、いろいろ準備をすることももちろん大事ですが、勝つことだけを考えて迷いを捨てるという姿勢が勝負強さに繋がっているじゃないかと考えさせられました。
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樋野竜司
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。