マーベラスカイザーで中山大障害を勝った熊沢騎手が、その勝利ジョッキーインタビューで興味深いコメントを残していました。「かかるけど、かかり過ぎないので、乗りやすい馬です」と。
にわかには意味がくみ取れないですが、障害ジョッキーだからこそ出てきた言葉なのではないでしょうか。というのは、ズブくて進んで行かない馬の場合を考えると、道中馬のアクセルを吹かしながら、障害まで飛ばなくてはならない。だから、コントロールが利かないくらい引っかかるのも困るけど、馬が進んでいかないのも困るのと思うのです。
馬がかかり気味に進んで行ってくれて、手綱の押し引きでスピードを調整するくらいが、ちょうどいいのかもしれません。
これは、障害レースに限らず、平地芝の長距離戦にも通用する話のような気がします。いくらスタミナが豊富でも、レース中に何度もアクセルを吹かしたり、ブレーキを踏んだりしていると、それだけガソリンをロスしてしまうもの。
一見行きたがっているように見えても、ブレーキに強弱をつけることでスピードをコントロールし、それでペースの抑揚に合わせたほうが、直線に脚を残せると思うのです。
先週の菊花賞で3着に入線した武豊騎手のエアスピネルの騎乗が、まさにそれでした。神戸新聞杯で後方からの競馬の選択したのを見て、菊花賞で先行したいという武豊騎手の意図を感じました。前哨戦で折り合いに専念することで、距離延長の菊花賞で馬が行きたがっても、コントロール不能なほどかからないように塩梅を調整していたと思うからです。⇒当時のコラムはコチラ
先週は、エアスピネルの全弟のエアウィンザーが未勝利を快勝。こちらは、折り合いもバッチリつくタイプで、兄とは違って優等生タイプの馬に見えますが、逆にかからないのが弱点といえるのかもしれません。
前哨戦が奏功したか
武豊エアスピネル3着健闘!
樋野竜司
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。