ジャパンCを世界レコードで快勝し、史上最強の声まで挙がったアーモンドアイが不在のため、グランプリのイメージが薄い今年の有馬記念。だが古馬最強と評価されているレイデオロの出走で、面目は保たれた。
「天皇賞・秋を勝った後は、早々とジャパンC回避を決め、有馬記念1本に絞ってきました。おかげで疲れが無いのはもちろん、仕上がりも良好で、不安な点は全くないですね。アーモンドアイ不在のここは勝たねばなりません」(競馬専門誌記者)
もしジャパンCに出ていたら、あのアーモンドアイの強さを見てしまうと、勝っていたか微妙なところ。有馬記念一本に絞ったことは、結果的に正解だったような気がする。
ただハイレベルを経験したジャパンC組だって黙っていない。
「アーモンドアイばかりが評価されているようだが、ジャパンCのスーパーレコードをつくったのは、逃げたキセキだからな。ペースを落として逃げていたら、あの時計は出なかったのだから殊勲賞はキセキだよ。しかもアーモンドアイより4キロも重い斤量を背負い、1着から0・3秒差。時計は2分20秒9と、この馬も従来のレコードを大きく更新している。その価値は絶大だ。勝ったアーモンドアイは不在だし、コーナー6つの中山2500mも先行馬には有利。同じコースの日経賞大敗で不安視する人もいるようだが、菊花賞の反動から調子落ちが続いていた時期の結果なんて意味がないよ。まあ前走だけ走れば、レイデオロにも勝てる。
問題は状態だよな。ジャパンCであれだけの時計を出すと、どうしても反動が気になる。かつても、スーパーレコードのハナ差2着だったオグリキャップ、9馬身差圧勝のタップダンスシチー、4馬身差のエピファネイアなど、ジャパンCで歴史的な激走をした馬は、有馬記念で崩れている。キセキも、この類に入ってしまうと思うんだよ。秋4戦目だし、そろそろ疲れも見える頃。菊花賞の後にも反動が出た馬だしね。
ただ『JCの疲れが残っていたら回避』という話もあったのに、出走にゴーサインが出たし、レース後に減っていた馬体も戻ってきているから、悪くはないのだろう。1週前の調教を見る限りは、さすがに上積みはないが、ジャパンC前から大きく落ちた感じもない。ちょっと判断が難しいなあ…」(関西記者)
トレセンで見ている記者でも判断に困るのだから、取捨選択は難しい。最終調教をよく見て、判断するしかあるまい。
そのほかの有力馬の近況を聞いておきたい。
「今年は3歳馬が好成績をあげていますから、ブラストワンピースは注目です。調教の動きは相変わらず豪快で、調子は悪くありません。不安があるとしたら中山コース。あまり器用なイメージがないですからね。
それならミッキースワローのほうがお薦めです。中山はセントライト記念で、皐月賞馬アルアインをあっさり差したように適性はあります。ジャパンCでは、内を通った馬が断然有利な馬場で、唯一外から脚を伸ばして5着。叩いてデキも上がっています。
ある意味、どの馬よりも注目のオジュウチョウサンはデキだけなら負けていません。でも勝ち負けとなると、さすがに推せません」(専門誌記者)
オジュウチョウサンには頑張ってほしいが、さすがに馬券を買う勇気はなかなか出ないところ。
関西馬は、復活を期す馬が並ぶ。
「サトノダイヤモンドは、ここが引退レース。だから悔いのない仕上げで臨んでくることは間違いない。ただ調教を見る限りは、どうしてもいい頃と比べると見劣る。
同世代のマカヒキも同じようなものだ。それならシュヴァルグランのほうがいいだろう。長めから意欲的に追われ、前走以上につくってきた感がある。陣営も、前走よりもう一段ギアは上げられると話しており、ボウマン騎乗も含めて楽しみは増している。でも実績から売れるだろうから、馬券的には妙味はないかな。
それならモズカッチャン、ミッキーロケットのほうが妙味はある。モズカッチャンは予定していた府中牝馬Sを使えずエリザベス女王杯はブッツケ。そのぶん馬は、まだまだフレッシュな状態。一叩きで有馬記念は走り頃だ。昨年、もう終わっていると思われていたクイーンズリングが穴を開けたように、牝馬は怖い。
ミッキーロケットは、宝塚記念を勝ったのに相変わらず人気がない。宝塚記念ではタフな展開を、唯一前へ行って押し切ったようにスタミナはあるから、中山2500mは向く。ジャパンCを筋肉痛で回避したが、JCの翌週から坂路に入っており大きな影響はない。もともとJCより有馬記念狙いだから、ここは大勝負だよ」(関西記者)
安全なレイデオロで行くか、反動は怖いが世界レベルのパフォーマンスを見せたキセキで行くか。どちらから入るか迷うが、穴候補もミッキースワロー、モズカッチャン、ミッキーロケットと駒は揃っている。
最終的な馬券の判断は、キセキの取捨選択にかかるだろう。能力から完全に消すのは怖いが、人気になるだけに、儲けを重視する方は抑え程度の扱いでいいかもしれない。
(栗東在住ライター:鷲崎)
栗東在住ライター:鷲崎
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