近年、日本馬の海外遠征が活発化し、更に有力馬のつぶし合いを避けるためか、国内の各GⅠレースのメンバーが手薄になりつつある。1年の総決算である有馬記念も例に漏れず、グランプリとは言い難い年もあった。
それがどうだろう。今年の有馬記念出走予定馬を見ると、古馬中距離GⅠ戦線(牝馬限定は除く)の大阪杯(アルアイン)、天皇賞・春(フィエールマン)、宝塚記念(リスグラシュー)、天皇賞・秋(アーモンドアイ)、ジャパンC(スワーヴリチャード)の勝ち馬が全て名を連ねている。
更に4歳牡馬クラシック戦線からは、引退したダービー馬ロジャーバローズ以外の2頭(皐月賞馬サートゥルナーリア、菊花賞馬ワールドプレミア)が参戦。
他にも、ダービー馬レイデオロ、菊花賞馬キセキ、JC勝ち馬シュヴァルグラン、NHKマイルC勝ち馬アエロリットと、計11頭のGⅠウイナーが集結する最高レベルのメンバーが揃った。
豪華さを増したのは、やはりアーモンドアイの出走表明が大きい。
香港遠征が決まっていたが、熱発で取りやめ。そのまま年内は休養という見方もあったが、嬉しいことに陣営は有馬記念出走を決めてくれた。だが急遽の出走に、一部では状態を不安視する声もあがった。
「歴史的名馬で、しかも体質が強くない馬。慎重にレース選択をする立場にある馬を出してくるのですから、状態面の心配は要らないでしょう。熱発も軽いものだったし、有馬記念へのゴーサインも、公式発表より早くに決まっていたほどですから、『急遽出走』なんてことではないですよ。ルメール騎手も確保できたので、問題は初の中山ってことくらい。でも先にも行ける馬なので、深く考える必要はないと思います。アエロリット、キセキ、クロコスミアなど強力な先行馬がいるので、レースレベルも上がるでしょう。そうなったら、この馬には断然有利です」(競馬専門誌記者)
せっかくアーモンドアイが出走を決めてくれたのだから、強い競馬を見たい。ただ相手は、これまで以上に強力だ。
「アーモンドアイにとっては、これまでで最強のライバルになるんじゃないかな。それがリスグラシューの存在。かつては折り合いに難があり積極的な競馬ができず、脚を余したり届かない結果が多かった。しかし、レーン騎手が宝塚記念で騎乗すると、好位で折り合い、直線でも難無く抜け出して快勝。以前から強けど、更にパワーアップしたことは間違いない。その強さを証明するように、豪州伝統の大レースであるコックスプレートも快勝。その強さは世界レベルだよ。ここが引退レースだし、この馬のためだけにレーン騎手が来日するのだから、陣営もかなり力が入る一戦。アーモンドアイ1強のムードが強いけど、ここは2強だよ」(関西記者)
確かに、ここ2戦を見るとリスグラシューも、アーモンドアイに匹敵する強さを感じさせる。
しかし最高レベルと言われる、今年の有馬記念。簡単に、この2頭で終わるとは思えないのだが。
「勝負付けのついた古馬よりも、伸びしろの大きい3歳馬のほうが楽しみは大きい。まずは皐月賞馬のサートゥルナーリア。前走で折り合いを欠いたあたりは、この血統の悪い部分が出てきて嫌だが、ポテンシャルはアーモンドアイ、リスグラシューに負けないものを持っている。中山はGⅠを2勝している舞台だし、距離も楽勝した神戸新聞杯から問題ない。とにかく問題は、気性的な問題だけ。
菊花賞馬のワールドプレミアは、友道厩舎の馬らしく、秋になって大きく成長した。まだまだ伸びる可能性を秘めているので、前走以上に走れるかもしれないが、中山コースは合わないかも。
逆に中山で狙いが増すのはヴェロックス。皐月賞ではサートゥルナーリアと少差の勝負をしているし、内回りや小回りでは強い競馬を見せている。菊花賞、ダービーは、この馬には合わないコースだったが、それでも3着。折り合いが難しい馬なので、コーナーが6つある中山の2500mはいいんじゃないかな。キャラ的に頭はなくても、2、3着ならある」(関西記者)
一発大逆転を狙うならサートゥルナーリア、穴をねらうならヴェロックスは面白そうである。
豪華メンバーで、いろいろな馬に目が行く有馬記念だが、ハイレベルになればなるほど、能力通りの結果になる可能性は高くなる。アーモンドアイ、リスグラシュー優勢ではあるが、年末最後の大逆転を狙いたい方には、3歳馬をお薦めしたい。
(栗東在住ライター:鷲崎)
栗東在住ライター:鷲崎
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