3000mの距離を嫌ってか、最近の菊花賞は世代の主役が出走を避ける風潮が強くなっている。昨年は神戸新聞杯を大楽勝したサートゥルナーリアが回避。一昨年も、神戸新聞杯を勝ったダービー馬ワグネリアンが、菊花賞を回避するという話があった(結局故障で、秋競馬は休養)。
おかげで菊花賞の価値が年々微妙なものになってきていたが、今年は違う。オルフェーヴル以来の三冠馬を目指し、世代最強のコントレイルが菊花賞に歩を進めてきた。
秋初戦の神戸新聞杯は、他馬を子供扱いの楽勝。春の二冠で破ったサリオスが、毎日王冠を楽勝し、コントレイルの評価は更に上がっている。三冠へ向け、能力的に不安点は全くないと言っていいだろう。もし不安があるとしたら、3000mの距離くらいか。
「デビューした頃は『マイラーかも』という話も出ていたので、当時は距離不安もありました。ただ2400mのダービー、2200mの神戸新聞杯を見る限り、しっかり折り合いもついていましたし、もはや距離不安は無いと思っていいですね。
むしろ怖いのは展開です。断然人気の大物が負けるときは、大逃げを打った馬に幻惑されたケースが多いですからね。ブエナビスタが負けたエリザベス女王杯のクィーンスプマンテ、オルフェーヴルが負けた天皇賞・春のビートブラック、人気馬が総崩れになった天皇賞・春のイングランディーレなど、長距離戦の大逃げは、後方の馬が物理的に届かない形になってしまうのか、そのまま逃げ・先行馬が残るケースがあります。こうなると能力云々の問題ではありません。
コントレイルがズバ抜けて強くても、勝負処で絶対届かないくらいの差をつけて逃げられれば、波乱もあるかもしれません」(データ解析班)
そこで注目を集めるのがバビットだ。
現在4連勝中で、ラジオNIKKEI賞、セントライト記念と重賞も2連勝と実績も十分だ。ただ2戦を見る限り、大逃げをするタイプとは思えない。溜め逃げでは、コントレイルに捕まってしまうだろう。ただ菊花賞に限っては、溜め逃げの形になる状況には無いようだ。
「前走ダート(シリウスS)を使ったキメラヴェリテが、まさかの菊花賞出走を決めたようだ。陣営は自分の競馬に持ち込みたいと言っているから、逃げたいということだろう、逃げて4連勝しているバビットも、楽には逃げられない」(関西担当記者)
また関東からも、逃げたい馬が一頭出走を予定している。
「現在3連勝中のアンティシペイトですね。
2、3走前は逃げ切りで、前走は2番手抜け出し。陣営は、逃げた競馬のほうが良かったと話しているようなので、できればハナを切りたいはず。鞍上に菊花賞男の武豊騎手を迎えていますから、思い切ったレースをしてくると思います。
調子もいいですよ。同じく菊花賞を予定のサトノフラッグ、ダノングロワールと3頭併せで、最後の伸びは、この馬が一番良かったように思えます。人気もそれほど無いでしょうし、鞍上の腕も含め、一発期待できます」(関東担当記者)
これで行きたい馬がバビット、キメラヴェリテ、アンティシペイトと3頭。みんなが行ったらハイペースで共倒れになってしまうのではないか。
「ブエナビスタが負けたエリザベス女王杯、オルフェーヴルが負けた天皇賞・春は、ともに複数の馬が先行しています。エリザベス女王杯は、クイーンスプマンテ、テイエムプリキュアの2頭が後続を引き離して逃げました。天皇賞・春は、序盤はゴーデンハインド、ビートブラック、ナムラクレセントの3頭が行く構えを見せて後続を引き離し、2周目に入ってゴールデンハインド、ビートブラックが大逃げの形になりました。単騎逃げだと如何にもマイペースに見え、却って後続が警戒します。ですが複数の馬が先行すると競り合って見え、最後はバテると思われるのか、後続の始動も遅いような気がします。今度の菊花賞も、3頭が前へ行って後続を引き離し、それぞれ隊列を守っていけば、コントレイルを欺ける可能性はあります。特に今回は、アンティシペイトに武豊騎手が乗っていますからね。先行勢をコントロールするような競馬をしてきたら、コントレイルには脅威だと思います」(データ班)
コントレイルを倒すとたら、これくらいしか方法は見当たらない。恐らく競馬ファンの多くは、コントレイル三冠達成の瞬間を待っているだろう。それでも、「一攫千金を狙いたい」という人は、先行勢の一発に賭けるのも手だろう。
栗東在住ライター:鷲崎
WASHIZAKI
熟練競馬ライター達がとある事情で新聞・テレビなど一般メディアでは取り上げられない業界の「アウトな裏話」を会員様限定でこっそりと公開!