金曜日を中心に、記録的大雨に見舞われた関東地方。東京競馬場も、日曜日までに300ミリ近い降雨量があり、水はけの良いコースをもってしても不良馬場は避けられず、想定よりも5~6秒ほど時計がかかっていた。安田記念はトップレベルの馬が極上のスピードと切れ味を競う内容を期待されたが、極悪馬場とミッキーアイルがハイペースで飛ばしたこともあり、最後の1Fが13秒8というズブズブの展開。各馬が脚を取られる中、GⅠ2勝2着2回の実力馬グランプリボスが復活のゴールを決めようとしたところに、ジャスタウェイが迫る。最後は捻じ伏せるようにハナ差競り勝ち、「世界一」の貫録を示した。
「中山記念で時計のかかる馬場をこなしたが、トビの大きい馬で、重い馬場が得意とはいえないはず。実際直線は他馬同様、脚を取られて苦しがっているようにもみえたが、最後は底力を見せた。着差こそハナだが、能力差を感じさせるに十分の内容だった。
あとは反動がどれくらい出るか。どうやら宝塚記念は使わない方向のようだが、それも仕方あるまい。先には凱旋門賞という大きな目標があるからね」(専門紙記者)
適性より短い距離、そして厳しい馬場に耐えて結果を出したことで、ジャスタウェイの凱旋門賞での期待感は更に高まってきた。
惜しかったのはグランプリボス。厩舎周辺からはベストの状態にないような話がはいっていていたが、馬とジョッキーのファイトが世界一の馬を最後まで苦しめた。
「分かりにくい馬だよなあ。2年前の安田記念は13番人気2着、昨年は2番人気10着、そして今年は16番人気で2着だからな。近走は上位人気になると負け、人気が落ちると激走する傾向が強い。昔からこういう馬は『新聞を読む(新聞の印と逆の結果になる馬が言われる)』って言われるんだよ。そういうタイプとして覚えておいたほうがいい」
今後もグランプリボスの取捨には頭を悩ましそうだ。
大量出走で話題を呼んでいたディープインパクト産駒勢は、完敗に終わった。
「もっとも有力と見られていたワールドエースは、体に幅があって厚みもあり、力強い歩様でパドックを周回し、仕上がりは文句なしって状態だった。それで5着だから、やはり馬場なんだろう。
2番人気のミッキーアイルも、京都の高速馬場で大レコードを出したようにスピード優先の馬。馬場もそうだが、NHKマイルCが勝っても物足りない内容だったように、東京コースもあまり合っていないのでは。坂がダメというわけではないが、より能力が発揮できるのは京都のような平坦コースだろう。秋のマイルCSで改めて期待したい」
ディープインパクト産駒が重馬場では厳しいことを、改めて実感させられた安田記念でもあった。
他のレースにも目を向けたい。鳴尾記念は寂しいメンバーだったが、1番人気のエアソミュールが人気に応えた。
「鉄砲の効く馬で、毛ヅヤも良く、リフレッシュ効果がばっちり出ていた。折り合いの難しい馬だが、戸崎騎手になってからは、これをうまくなだめて走らせている(戸崎騎手騎乗で4戦3勝)。サマー2000シリーズでの活躍が期待できるが、それはアドマイヤタイシも同じ。かつて5戦連続重賞で2着したが、今回も2着とキャラは変わっていないものの安定感が戻ってきた。中距離重賞を得意としているだけに、この馬も2000シリーズは勝てるかどうかは微妙も、馬券圏内には入ってくるのでは」
この2頭は夏の間も注目したい。
新馬戦も開幕したが、東京はいきなりの重い馬場で、この時期スタミナ、パワーが足りない2歳馬にはきついスタートとなった。
「関西は良馬場で、最初からスピードや瞬発力が全面に出たレースになった。マイル戦は、昨年の勝ち馬がレッドリヴェール。今年はケツァルテナンゴが勝ったが、上がりタイムで劣り、さすがにあの馬までの期待は厳しい」(関西記者)
「東京は馬場が悪すぎてレースレベルや将来を測るには参考外。負けてしまったが、土曜日のレースで人気を裏切ったリミットブレイクは、1200mでこの先、巻き返しを期待したい」(関東雑誌記者)
今週は東京の芝1800m戦にアヴニールマルシェ、ベルラップ、ディープフォルツァ、ロジチャリスなど期待の良血馬が揃うというので、こちらはお見逃しなく。
(美浦ライター:高木)
栗東在住ライター:鷲崎
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