小倉記念を勝ったサトノノブレスだが、一部では仕上がりを疑問視する人もいた。それは直前調教で2勝馬にあっさり遅れたからだ。しかし、その2勝馬の正体をしっかり把握していた人にとっては、その遅れも気にならなかったかもしれない。その正体は、土曜日の1000万特別で3勝目を飾ったサトノアラジンだ。
「この馬をよく知っている人は、POGファンが多いかもしれないな。なにせ2歳時はデビュー前から飛び抜けた評判馬だったから。注目の新馬戦も大楽勝し、多くの記者がクラシック候補の一頭に挙げていた。だが、いざ重賞レースに出走すると、いいところ(3着)までは来るのだが、なかなか2着に食い込めないので、賞金が増えない。結局500万の身のまま、ようやく3歳春に条件戦に出たら、まさかの2着。そこまで重賞で上位に入り、ワンアンドオンリーとも好勝負していたのだから、あの敗北はショッキングだった」
結局大器と言われたサトノアラジンはクラシックレースに出走することはできず1勝馬のまま休養。夏の中京で復帰すると、500万特別を楽勝。そして九州スポーツ杯も楽勝し、菊花賞候補として復権を果たしている。
「以前はズブいイメージが強く、後方から行って届かず。これではイカンと今度は早めにまくるようにしたが、どうも無理な感じが強く、最後は失速する形になっていた。
しかし休養後は一変。むしろかかるくらいの勢いで好位置につけると、勝負どころでも無理なくジンワリ進出して、最後は楽に抜け出し。自分から走る気を起こし、これまでとは精神面でもかなり違ってきたね」(雑誌記者)
この変化は何なのか。
「以前は期待が高すぎたか、どのレースでも力が入った仕上げになって、余裕が無かったのではないか。馬がズブかったのも、そのあたりが影響して馬が走ることにイヤイヤをしていた感がある。でも今は違う。調教でサトノノブレスに先着して評価されたが、時計そのものは以前とはそんなに変わっていない。前から凄い時計を出していたからね。でも今は無理せず出せているということだろう。
それに馬体も、巨体をどこか持て増していたが、今は無駄な肉が削ぎ落され、スッキリ見えるようになってきた。
ビッグウィーク、スリーロールス、オウケンブルースリなど、夏から秋にかけての条件戦で強い競馬をし、その勢いで菊花賞も制した馬は多い。サトノアラジンは当初から大物と言われ、それが開花しつつある今、菊花賞の有力候補と見ていい」
昨年春の牡馬クラシック路線は、レベル的には高くないと評している人が多い。その理由に、期待のディープ産駒が不振があった。その主犯と言えたのがサトノアラジンだ。
「サトノアラジン以外にも、春にデビューして3戦3勝のエイシンヒカリ、まだ未完成でダービーに出ていたトーセンスターダム、ワールドインパクト、ダービーに出走できなかったステファノス、ラングレーなど、ディープインパクト産駒にはまだまだ楽しみな馬がいる。
この秋はディープ勢が3歳世代の流れを大きく変えるのではないか」
待望の覚醒を果たしたサトノアラジンを初め、今名前が挙がったディープインパクト産駒は要注目。果たして菊花賞に何頭のディープ産駒が出てくるか。それで菊花賞の結果も大きく変わるだろう。
(栗東在住ライター:鷲崎)
栗東在住ライター:鷲崎
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