今年の新種牡馬で最も注目されたのはハービンジャーである。しかし同馬が晩成ステイヤータイプのため、日本の馬場に合うのか、また早くから活躍できるか疑問視されたのは、ここでも説明してきた。
その不安が高まったのは、洋芝の北海道でハービンジャー産駒が躍進する少し前。6月頃の話だ。
「セレクトセールまでにハービンジャー産駒が結果を出さないと、セリで高い値がつかなくなる。だから6月の新馬戦からハービンジャーの大物が出てくるはず」(トレセン関係者)
そんな話が出ていたのだが、その中心となると言われていたのがサンマルティンだった。
「母が重賞ウイナーのディアデラノビアで、半姉もマーメイドSを勝ったディアデラマドレと母系は一級品。調整の進み具合も良く、早々と美浦トレセンに入厩し、新馬の開幕週にデビューって話だったんだよ。
でも、いざトレセンに入ってきたら動きが悪くて、結局デビューせずに牧場に戻されてしまった」
この話が周囲に流れると、「やっぱり父がハービンジャーだからだよ。2歳戦から走らせるなんて無理」という意見も出てきて、ハービンジャー株は一気に下がっていった。
しかし洋芝の北海道開催が始まると、勝ち馬が続々登場。トーセンバジル、カービングパス、フローレスダンサーなど、クラシックを期待される馬が勝ちあがった。
こうしてハービンジャー株がV字回復する中、サンマルティンは再入厩し、先週いよいよ新潟のマイル戦でデビューとなった。
「ここまで勝ち上がった評判馬は洋芝。でも、こっちはスピードや瞬発力を要求される新潟だから不安もかなりあった」(雑誌記者)
しかしレースへ行くと、あっさり好位を取り内から楽に抜け出すと、あとは独走。最後の100mは流す余裕も見せながら上がり3Fは33秒0の高速で、瞬発力の不安をあっさり払拭してみせた。
「身が詰まった馬体だが、追い出すと力強いフットワークで、10秒3(残り1~2F)の高速ラップも楽々乗り切った。
一度戻して作り直したのが良かったね。でも6月の新馬戦でこれができたら、ハービンジャー不安説なんて無かったかもしれないけど」
一時はハービンジャー不安説の戦犯のように言われてしまったサンマルティンだが、新潟コースで快勝したこともあり、今ではハービンジャー産駒でも一番の存在となってきた。そもそも同産駒でも1、2と呼ばれていた評判馬。同日に行われた新潟2歳S上位組に並ぶ日も遠くあるまい。
(美浦ライター:高木)
栗東在住ライター:鷲崎
WASHIZAKI
熟練競馬ライター達がとある事情で新聞・テレビなど一般メディアでは取り上げられない業界の「アウトな裏話」を会員様限定でこっそりと公開!