先週より「スーパー未勝利戦」がスタートした。スーパー未勝利戦とは正式な名ではないが、今の阪神、新潟開催で行われる未勝利戦を差すもので、①前走５着以内（平地戦に限る）、②前走までキャリア５戦以内のどちらかを満たしていないと出走できない、というルールが設けられており、開催のうち出走できるのも一戦のみと制限がある。つまり前走５着に入れなかった馬、またはキャリア５戦以上の未勝利馬は、すでにＪＲＡを去ってしまったか（引退か地方競馬へ）、または未勝利の身で５００万条件に出走しているはずである。

　もちろんスーパー未勝利戦で勝ち上がれなかった馬も、次開催からはＪＲＡを去るか、ローカル開催の５００万に出走することになる。

　そんなこともありスーパー未勝利戦にあたっては、各陣営はいろいろ頭を悩ませているようだ。

「何が困るって、芝のレースが少ないんだよ。スーパー未勝利戦は新潟、阪神ともに１４レースずつ組まれているが、芝のレースはお互い２つだけ。つまり全２８レースのうち、ダートが２４戦で、芝は４戦だけなんだ。しかも芝の短距離戦は無し。そこに適性のある馬はどうなるんだよ」（栗東トレセン関係者）

　それが、このような結果も招いている。

「日曜の中山４レースは、そんな貴重な芝のレース。もちろんフルゲートになった。そこで一際目立っていたのがプラチナジュエリーだ。８月２３日の未勝利戦で１３着と大敗。すでにキャリアも５戦を超え、スーパー未勝利戦出走は難しいかと思ったが、連闘で２クラス上の１０００万特別に挑戦。そこで２着に入る大健闘を見せ、前走５着以内ならＯＫのスーパー未勝利戦出走権利を見事に取った。

　本来なら１０００万で勝ち負けした馬が未勝利戦を勝つのは難しくないはず。しかし、この馬は芝のマイルあたりのレースを使いたいのだが、それに当てはまるのは開幕週のマイル戦のみ。そこで連闘明けのうえに、中１週で札幌からの輸送という厳しい条件を陣営が認識しながらも、このレースに出走した。不安は的中し、１０００万条件のときより着順を落とす4着という結果となった。１０００万で好結果を残したくらいだから、このままＪＲＡに残り裏開催の５００万に挑戦すると思うが、芝のレースが少ないために不本意なローテを取らなければならないのは可哀想だ」（前出関係者）

　こうした調子や適性に合わぬ馬が他にもたくさんいたからなのか、芝のレースは新潟、阪神ともに大荒れとなった。

　またスーパー未勝利戦を使うためなのか、こんな馬もいる。

「出走権利の無い馬は、頭数が少なく、メンバーの弱い500万のレースを使い、何とか5着以内を目指すケースもある。これができれば、スーパー未勝利戦に出られるからね」

　先のプラチナジュエリーに似ているが、今の話にあてはまるのが日曜日阪神8レースのスズカローラーとロコモーションの2頭。スズカローラーは前走が11着で、キャリアも7戦だったのでスーパー未勝利戦の出走権利が無く500万に出走してきたが、7番人気ながら2着。ロコモーションも前走6着で、キャリアも6戦と、惜しくもスーパー未勝利戦の出走権が無かったが、このレースで10番人気ながら4着。500万で5着以内に入ることで、ともに見事にスーパー未勝利戦出走権利を「逆転」でゲットした。この時期は500万に出走してきた未勝利馬も舐められない理由がここにあるのだ。

　また騎手依頼を巡っても、各陣営は大変なようである。

「もう落とせない一発勝負だから、いい騎手を頼もうと必至だよ。そうなるとリーディング上位騎手と思いがちだが、結構早くに埋まってしまうのが減量騎手なんだよ。これは関西に目立つのだが、今年は小崎、松若、義とそれぞれ評判がいい。特にダートは斤量差が結果に重要に結びつくから、ダートのスーパー未勝利戦は、先の新人３人と、岩崎も含めた４人の減量騎手が人気だよ」（関西記者）

　この話を証明するように、日曜阪神の２レースは戸崎騎手が勝ったが、２、３、４着には義、松若、小崎の新人３人が続き、６レースでは松若、岩崎、小崎で上位３着までを独占した。

　最後の一発勝負にそれぞれ思惑が絡みあうスーパー未勝利戦。そこにはローテーションや騎手にヒントが隠れている。普段は未勝利戦に興味のない人も、ここは一発馬券の狙いを定めてみてはいかがだろう。

（栗東在住ライター：鷲崎）