田島良保調教師の勇退が発表されたのはダービー直前のことだった。通常勇退というと経営に失敗したと思われがちだが、この厩舎の場合はそうではない。トレセンには顔を出しているものの、体調不良ということもあったこと、年齢も10月には66歳を迎えるといった状況もあり、少し早いが勇退することになった。
「仕事は厳しいけど、面倒見のいい先生だったよ。思い返せば菅原の初勝利は田島先生が我慢して使ってくれたから。娘婿の川島騎手が菅原を可愛がっていたこともあるけど、今は馬主の手前、一度でも失敗したら連続して乗せにくい。社台系の馬に縁がなかったから大きいところも勝てず、騎手時代に比べると地味に映るけどよくやったと思うよ」とベテランTMはねぎらう。
勇退が発表されてスタッフは落胆しているのかと思いきや、先生に有終の美を飾らそうと力が入っているという。
「当初は通算300勝(現在292勝)をという目標もあったみたいだけど、さすがに1カ月程度になってしまえば厳しい。ただ、昨年は10勝といつもの年に比べると足りない成績だけど、今年はここまでに既に9勝。少なくともあと1勝は勝つと張り切っているスタッフが多いよ」という。
騎手時代もまだ乗れると周囲は引退をしないように説得していたものの、氏はあっさりと引退。その理由は自分の理想とかけ離れる姿はプロとして見せられないという信念を持っているためだという。ちょっと早い勇退劇だが、残り1カ月、同厩舎最後の勝負の行方を見守りたい。
(栗東在住ライター:鷲崎)
栗東在住ライター:鷲崎
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