これまでも外国人騎手の騎乗には危ないものが多く、多くの議論を生んできた。そして皐月賞では、デムーロ騎手騎乗のドゥラメンテが直線で大きく斜行。瞬間移動といってもいいほど派手なもので、3頭の馬が被害を受け、うち一頭のベルラップは戦意喪失したのか大きく失速して大差負けとなった。
そのドゥラメンテのほうは、斜行の勢いままに獣のような勢いで前方を飲み込み、驚異的な強さで一冠目をもぎとった。
勝ったとはいえ、誰にもはっきり分かるような斜行がありながら、審議のランプはつかず。だがレース直後にデムーロ騎手は裁決に呼ばれ、9日間の騎乗停止処分となった。
こうした騎乗に対し、新聞やサイトの記事では、後味の悪いレースという意見もいくつか見られたが、競馬場内のレース後の雰囲気は、それほど重苦しいムードは無かった。
「ルールが変わって、例え斜行があっても、妨害した相手より自分のほうに脚があれば、着順は変わらなくなった。でも騎手に対しては騎乗停止処分がある。だからルールが変わったからといってラフプレーが増えることはないという見方だったが、賞金の高いレースでは関係ない。騎乗停止になってもいいから、一発勝負のラフプレーに出てくる騎手もいるだろう。
ルール変更後は、ファンの考え方も変わってきている。斜行=失格という時代は、自分の馬券もパーになってしまうから、ラフプレーで上位に持って来ようという騎手には批判が多かった。それが今では失格や降着が少ないから、馬券を持っているファンは、少々ラフなプレーをしても上位に持ってこれる騎手を支持する人が増えている。だから今回のデムーロに対しても、『危ない』という否定的な声より、『さすがデムーロ』、『ここ一番は、やはり外国人』という肯定的な声のほうが多かった。まあ今回の件は、デムーロのラフプレーというよりは、ドゥラメンテが勝手に飛んで行ったという見方が強いからかもしれないけれど。
思い切った騎乗というのは紙一重で、ファインプレーもあればラフプレーと見なされるものもある。こうした騎乗への評価がどう変わっていくのか。
ジョッキーの多くは、狭いところを突き抜けたり、強引に内外に出すのは危ないと考えている。逆にファンは、馬券のためには少々のラフプレーも仕方がないと思っている人が増えてきており、ズレが出てきている」(競馬専門誌記者)
時には、あまりにも危ない騎乗をする騎手に怒りを覚えることがある。反面、勝負所でチャレンジせずに無難に騎乗する騎手に対して物足りなさを感じるのも事実。
何が正しいのか。結論を出すのは難しい問題だが、皐月賞のデムーロ騎手に対して、騎乗停止を食らった割に、否定的な意見がファンの間で少なかったことは考えさせられるところだ。
(美浦ライター:高木)
栗東在住ライター:鷲崎
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