少頭数ながらもGⅠ馬5頭集結で注目を集めた中山記念。結果は格で一枚劣るウインブライトの連覇と相成ったわけだが、9ハロン1分47秒6→1分45秒5とVタイムは前年より2秒以上も短縮。けれん味のない逃げを打ったマルターズアポジーが刻んだ前半3ハロン35秒0→中間3ハロン34秒9→後半3ハロン35秒6のハイレベル一貫型ラップで、並み居るGⅠ馬をナデ斬ったのだから決してフロックではない。
まさに今が旬を思わせる充実ぶり。古馬中距離路線の最高峰(大阪杯)でその走りを見てみたいところだが、どうやら次走は香港のクイーンエリザベスⅡ世Cが濃厚とのこと。真のトップレベルに通用するか否かの判断は、宝塚記念以降に持ち越しということになりそうだ。
古馬中距離路線に新スター候補が誕生したところで、今週はクラシック戦線にも同じ香りを漂わせる好素材が一頭。それが2011年の桜花賞馬マルセリーナを母に持つラストドラフトだ。東京9ハロンの新馬戦をラスト2ハロン10秒9→11秒1の超高速ラップで勝ち上がると、続く京成杯で一気にGⅢを制圧。破格のレコードを叩き出した葉牡丹賞組(シークレットラン、ランフォザローゼス)を問題にしなかったのだから、すでに世代トップクラスの域に達していると言っても過言ではないだろう。
中山10ハロンに必須のスピード持続力の持ち主ながら、ラスト2ハロン合計22秒台を苦にしないディープインパクト産駒並みの瞬発力をも兼備。目下のところ無傷の3連勝へ向けて死角は見当たらない。母はエルフィンSをステップにしての桜花賞制覇。異色のローテで勲章を手にした母とは対照的に、クラシックの王道を行く孝行息子の歩みからしばらく目が離せない。

明石尚典
AKASHI TAKANORI
関西学院大学法学部卒。大阪スポーツの若き俊英記者として知られる。ラップ理論の先駆者でもある上田琢巳記者を師と仰ぎ、同氏からの信頼も厚い。東スポ・大スポ週末版で「ラップナビゲーター」を大好評連載中。