オークスのVタイムは12ハロン2分22秒8。前年のアーモンドアイ(2分23秒8)はおろか、ジェンティルドンナのレースレコード(2分23秒6)をも軽々と飛び越えてしまったのだから、走破時計そのものは驚異的というほかない。ただ、この超高速決着をもってラヴズオンリーユーが超一流の器、とするのはいささか早計。前週のヴィクトリアマイルで8ハロン1分30秒5の世界レコードが、前日の3歳未勝利でも1分33秒4が飛び出す馬場レベル。驚愕のレースレコードもすんなり額面通りには受け取れない。
カギを握るのは秋以降の走り。当面の目標となる秋華賞であっさり2冠達成なら、アーモンドアイやジェンティルドンナの域に達する=牡馬を向こうに回してのGⅠ制覇も現実味を帯びてこよう。
キングカメハメハが12ハロン2分23秒台に足を踏み入れた04年以降、オークスのVタイムがダービーを上回ったのはわずかに2回。まとまった雨さえなければ、今週の競馬の祭典も2分22秒台の超高速決着が濃厚とみていいだろう。時計が速くなればなるほどモノをいうのが地力の高さ。例年より一段上の馬場レベルは、NHKマイルC制覇のアドマイヤマーズを一蹴した皐月賞ワンツースリーにとってこれ以上ない追い風となろう。配当的妙味を求めるよりも、心を砕くべきはサートゥルナーリア、ヴェロックス、ダノンキングリー3頭の序列の見極め。オークスの前後半4ハロン47秒0→47秒0のイーブンラップが示す通り、超の付く高速決着では爆発的な瞬発力よりもスピード持続力が求められる。
そこで期待したいのがヴェロックスの逆転劇。若駒S→若葉Sのリステッド連勝は同開催の古馬準OP勝ち馬を自身後半7ラップで圧倒してのもの。長く脚を使わされる我慢比べには一日の長があるとなれば、形勢逆転のシーンがあっても何ら不思議はない。

明石尚典
AKASHI TAKANORI
関西学院大学法学部卒。大阪スポーツの若き俊英記者として知られる。ラップ理論の先駆者でもある上田琢巳記者を師と仰ぎ、同氏からの信頼も厚い。東スポ・大スポ週末版で「ラップナビゲーター」を大好評連載中。