例年より後倒しになった七夕賞は、名物レースなのと同時に、サマー2000シリーズの一角といった点も相変わらず。
その中、GⅢレベルではないポテンシャルと見做されているのがドゥラドーレス。
確かに、OPでは3戦のみだが、3歳秋の菊花賞4着に食い込んだように底力の裏づけは既になされている。
唯、二番が利かない体質の弱さと隣り合わせで、5歳6月の3勝クラス突破を境に、脚部不安によるブランクがその最たる例。
一方、見切り発車で弾けなかった昨秋とは逆に、出遅れながらもレコードの2着だったエプソムCがあるし、今回と似たコース形態の冬・小倉は力で捻じ伏せた競馬。唯、1000m通過62.0秒と一向にペースが上がらぬ中、宥めつつで荒削りな面が垣間見えた。
勿論、そこからであればDWで素晴らしい反応を見せつけた併せ2本と動きの質は高くなっているし、直前の坂路53秒台が気温の上がり切らぬ朝一番と丁寧な仕上げを施せた分、ローカルのコーナー4回に関しては相殺される筈だが。
そこで浮上するのがシルトホルン。
4走前、道中からして分が良かった運びでもドゥラドーレスには完敗。
けれども、直後に見せ場なく終わったように、まだ調子に波がある段階だったのに対し、叩き2走目だった直近は坂下からスパートして押し切る強さ。
馬体のハリが違ってきたといった印象通りで、追い切りタイムがその時以上で益々活気が出てきた今回は正にピーク。となれば、冬の直接対決から0.5キロ貰ったことで抵抗力が増すこと必至。
昇級初戦になるコスモフリーゲンを侮ってはいけない。
軟弱な2着馬を交わせば事足りるといったのが3勝クラス突破だったし、その4月は特殊な高速ターフだっただけに、2.10.4秒の好時計も額面通りには受け取れぬ。しかし、それは骨折明け2戦目に過ぎなかったのだ。良化を辿ってはいてもまだ本物とまでには至らず。
対して、オール単走なのは通常のメニューで気にならぬ上に、丹念な稽古が大方外ラチ沿いと強度増しの中、ラスト4週は全て11秒台と力強い伸びを繰り返せたのに加え、中には5F64秒台突入さえ。
洗練された造りに裏打ちされた過程を踏んできたのが何とも心強い。元々、当距離では、のちにGⅡキングズパレスの2着があるほどで1F短縮はプラスにしかならぬ。未経験の福島でもハンデ差を生かせる状況に。
当然ながら。シリウスコルトも俎上に載せねばならぬ。
昨年8月の小倉記念から極端なスランプに陥ったのは、調教からコントロールを利かすのに苦労して実にならなかった結果、全体像が歪んで見えていたが為。逆に、転厩後は2、1、1着と高いレベルで安定している。
無論、新潟に関しては1000m通過61秒を超えるスローでの逃げが功を奏しての初重賞ゲット。とはいえ、後続を寄せつけなかったのは事実だし、4月の当舞台では控える形でも結果を出しているのだから自在味が裏づけられているわけ。
また、追い日以外に正面から1周行くパターンを取り入れることによって、ラスト2週は鞍上が手の内に入れていると実感させる、メリハリ利かせた稽古。
一昨年夏、前目に辛い流れだったラジオNIKKEI賞2着も示す通りのコース巧者といった要素も含め、58.5キロのみで評価を下げるわけにはいかぬ。
福島民報杯が初福島だったバラジはそこで2着。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。