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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2017年09月07日(木)更新

初重賞ゲットに抜かりなし グランシルク

雨の影響を受けた水曜のウッドだが、追い切り頭数が一気に増えて秋競馬のスタートを実感。中山開幕週のメインは京成杯AHで、ポイントになるのはマルターズアポジーで異論なしというところだろう。マイルシリーズのボーナスが関わってくるし、レースを引っ張る戦法に迷いはないからだ。

札幌記念との両睨みだった関屋記念では後続に影を踏ませぬ逃げ切り。中山マイルということなら、1600万下とはいえ、昨秋の当開催で結果を出している。元々、稽古駆けすることで有名だったが、長距離輸送のない今回はそれに拍車がかかった。

確かに、先着して当然の相手2頭だったとしても6Fで先頭との差は3秒4。それを覆したどころか、大外を選んだ直線は内に1秒、中には3秒の大差をつける独壇場で格の違いがまざまざ。重戦車のような迫力で前走を上回ると評価して良いのだ。しかし、問題は58キロのハンデで二匹目の泥鰌を得るには高い壁となりそう。

重賞にあと一歩及ばぬグランシルクを中心視すべきではないか。府中1400でこそ決め手がマックスになるのは承知。唯、今回の条件も守備範囲で春のダービー卿CTでは3着。それも進路を確保するまでにタイムラグがあった分で当時よりパワーも状態もUP。戸田厩舎らしく入念でシッカリとしまいを伸ばす稽古の繰り返し。単走だった最終追い、気合いをつけられた直線では舌を超すシーンも見受けられたが、フォーム自体は伸びやかで余力残しでの1F12秒1、真一文字の伸びであった。今度こそ

GⅠ馬ダノンプラチナは坂路専用馬となって復調を辿る。最終追いは53秒6~ラスト12秒4と前回時より遅い時計だが、ゆとりを持って仕上げられたのが確かだし、叩いての上積みも。唯、マルターズA同様の重斤で詰めの甘さを露呈するシーンが目に浮かぶよう。それならば、菊沢厩舎の2騎が面白い。

朝のラッシュ時に3頭併せの最内だったウキヨノカゼ、当然ながら最後尾からの追走で発達した胸前を駆使したダイナミックなアクション。しかも、鞍上との呼吸もピタリと合った見事なフィニッシュで年齢に反比例した充実ぶり。関屋記念では不発に終わったが、逃げ切った馬の絶妙なペース配分があった上に、長い直線は向かぬ。中山なら末脚を生かせる筈。

春の府中以来となるダイワリベラルが最大の惑星となる可能性も。何せ、同じ56キロだった4月は0秒2差で前走の大敗は落鉄が全て。また、休養前は負荷をかけることを避けた調整ぶりで少々立派な馬体だったのに対し、1週前には追走する態勢からウッド5F67秒台をマークとハードに追われた。感触を確かめる程度の併せ馬で十分だった直前が示す通り、引き締まった体で仕上がり◎。侮れぬ存在に。

土曜は秋華賞TRの紫苑S。掴み処のない鞍として名が通っているのは、消長の激しい牝馬戦ゆえで春の実績を全面的に信頼できぬ傾向にあるからだ。例えばディアドラ。オークス4着は評価に値するし、札幌では準OP落ちの4歳を封じる大金星と確かな成長。けれども、その前走が休み明けながら-12キロ。そこに至る過程まで遡ると、函館→札幌→栗東→関東圏への大移動となるわけ。疑ってかかるべし。

このコースでのGⅢ勝ちがあるライジングリーズンも。ピッチを上げたのが先月下旬と美浦入りが早かったわりに進み具合が遅いし、最終追いでも5F70秒を超える時計と少々手緩い。大目に見ても8分。同じ奥村厩舎なら、1週前にこれを遥かに上回る内容で併入したホウオウパフュームをより上位に取り上げたい。休養直前のオークスは謂わば‘出涸らし’の状態だっただけに立て直した効果は覿面。必要部位の筋肉に厚みが出てメリハリのある体に様変わりしたからだ。

2戦2勝のルヴォワールは3頭併せで2馬身の遅れ。しかし、一方がセダブリランテスとあれば頷けるし、自身が5F67秒2で動けたのなら及第点以上。数字のわりに華奢な印象だった春より丸味帯びて柔軟性のある動きに磨きがかかった。フレグモーネで大事を取ったことが功を奏したのは確かで、坂路に重きを置いていた以前からの成長が実感できる。奇しくも、中山2000で2勝目をマークした2頭が◎候補となった。

あとはエバープリンセス。単走でのしまい重点の繰り返しだが、使うたびに歩様が硬くなっていた春とは別馬。フックラとして身のこなしが実にシャープなのだ。成績から根拠を見つけるのは難しいが、末一手が嵌れば上位を脅かして不思議ない

西下する関東馬に注目できるのが、阪神・エニフSのマイネルバールマン。古馬との初対戦だった新潟は忙しさを感じさせたレース振りだったことに加え、‘行った行った’の展開。4着なら目途が立った。むしろ、太目感を感じさせぬ+22キロだったから、麗しい全体像、一層力の漲る雰囲気になったということで、進境度◎。今回は併せ馬で2馬身遅れだったとはいえ、最後までビッシリ追って5F66秒9の好時計をマーク。3歳OP勝ちの時計を詰めなければ通用しないし、前走からの2キロ増になる54キロとなるが、難なくクリアーできそう

日曜・新涼特別のディーズプラネットにも勝機が訪れる。2階級落ちしての2戦はワンパンチ足りなかった。しかし、小回りの1700では仕掛け処が難しい。そもそも、スプリンター寄りの気質で、それをラストに爆発させてこその馬である。遅い時間にDコースを選んだ追い切りは5Fから抜群のスピード感。半マイルからに至っては12秒台のラップを刻んで直線では外ラチに触れんばかりのコース取り。そこを豪快に駆け抜けた結果の5F63秒4と迫力満点。

中山の他では日曜・木更津特別のキャプテンベリー。一息入ったが坂路併用で入念な乗り込み。殊に、ピッチを上げたここ2週は並みの馬なら辛い道中であっても安定したフォームに終始して揺るぎなし。鞍上が手の内に入れているのは、去勢効果でハンドル操作が容易くなった為。トモが充実した分、前後のバランスが絶妙に。以前であれば注文がつく府中で安定していたここ2走が何より心強い。実質のトップハンデは牝馬ながら55.5キロを背負わされるダイワドレッサー。それに比べれば恵まれた57キロ。

プロフィール
柴田卓哉

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。



柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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