中山金杯同様、6Fからビッシリ追ったブラックバゴが鼻出血による回避で11頭となったAJC杯。年齢を重ねた中ではゴールドアクターが孤塁を守るといった様相になったが、GⅠ馬という称号に加え、[4.1.1.2]の中山巧者が別定57キロでの出走となれば優位に思える。が、本来なら昨秋からの使い出しで大目標は暮れのGPだった筈。にも関わらず、調整が遅れての臨戦という事実を踏まえなければならぬ。
これまで5本の併せ馬は1000万下のリヴェルディがパートナー。稽古駆けするタイプだけに自身のレベルUPを図るには格好の相手でもある。1週前は追い出されてからモタつくシーンがあっての遅れ。それに比べれば、行き出しで1秒あった差を挽回しての併入だった最終追いは及第点。脚色で劣ったのは追走の分だったし、6F80秒3の時計は速い。それでも、汗取りをかけた馬体には余裕があって、このひと追いでどこまでシェイプUPできるかという段階なら少々評価を下げるべきではないか。
直前が単走だったのは、菊花賞以来となるミッキースワロー。徐々にピッチを上げた道中があっても最後まで持ったまま。確かに、感触を確かめる程度といった印象だが、見た目より速い1F12秒3は存分に体を使えているからこそ。それを含め、ここ2週が案外なほど軽いが、暮れの段階でシッカリと馬を追い込めていたから気に病む必要はない。明け4歳としてはまだ7戦のキャリアで伸びしろ◎。目の覚めるような切れを披露したのが9月・セントライト記念で、同様の中山2200は格好の舞台。
成長度ということで注目に値するのがレジェンドセラー。こちらの追い切りは3頭併せでの6F追い。木村厩舎の直前としては十分過ぎるほどの負荷をかけてラストまで手を緩めずに1馬身先着。以前は体を持て余す面があったが、恵まれた身体能力がダイレクトに表れる走りになって実にパワフル。直線の長いコースがベターでも目下の勢いを軽く見ることなどできない。
あと、侮れないのがマイネルミラノ。前走は向正スパートと奇を衒う戦法が裏目に出た。勿論、中1週だけに5F73秒1と控え目だったが、8歳とは思えぬ馬体のハリが活気を呼んでいる。オールカマーで‘あわや’のシーンがあった条件で当時よりプレッシャーなく運べそうな状況なら巻き返しがあって良い。
今週、もうひとつの重賞が中京・東海S。フェブラリーSに向けての1戦だけに格重視ということで中心に据えなくてはならないのがテイエムジンソク。自ら動ける強味がある上に、同舞台のGⅠで惜敗は勲章、今回の相手で負けるわけにはいかない。
関東勢からはディアデルレイを。ここにきてOP特別で連勝と波に乗っている。確かに、前走の中山は単騎逃げで上手く運べた。唯、ラストから2F目が12秒1とその時点で後続に決定的な差をつけられたように、自分の型に嵌れば底知れぬ。加えて、3頭縦列の5Fスタートで外ラチ沿いにコースを取りながらラストは12秒3の鋭さ。二段ロケットのような加速でひと皮剥けた印象。テイエムジンソクのライバルになり得る。
中山の他では1000万下の特別戦に注目したい。いずれも土曜でまずは10Rの東雲賞。昇級初戦のレッドイグニスは好調キープ。5Fで4馬身先行しての併入だったが、間隔が詰まっているから強い稽古は不要でリズミカルに駆け抜ければ十分。しかも、鞍上が少し促してだけでも伸びやかなフォームとなってスイッチオン。意のままに操れる点で去勢効果は絶大と言えるし、マイルに転じてまだ3戦と底を見せていない。ハンデ戦なら即首位争い。
久々のショウナンアンセムにとってマイルは少々長くどうしても注文がつく。しかし、下降気味だった上に、道悪で全く動けなかった10月で見切りをつけたのが功を奏した。実際、年明けから小気味良い身のこなしを見せていたし、直前に至っては長目からハイピッチで進みながらラストも糸を引くような伸びと文句なし。外が伸びる今開催の馬場が大きなフォローにもなる。
9Rの初茜賞はリヴェルディで決まり。休養前の府中マイルで1分37秒2。その時計が示す通り、ワンターンのシンプルな設定がベターであるのは確か。唯、そこでも一旦は抜け出して勝ち馬の目標になったというレースの綾があった結果で悲観すべき内容ではない。
勿論、1000万下の遥か上を行くレベルで、伸び足りなかったように映る9月の当条件でも勝った馬は現OP。中川厩舎の看板でもあるゴールドアクターのパートナーを務めたのは冒頭に掲げた通りで、1週前は全く寄せつけなったし、先行態勢だったとはいえ手綱を絞ったままでのフィニッシュで6F81秒3だったから本物。アクセントの利いた馬体の造りで昨秋の使い出し時よりワンランク上。
これに対抗する馬として挙げたいのがサクレエクスプレス。最終調整に選んだのが北馬場だったが、それ以前のウッドでは3頭併せを計3本と濃厚なメニューを消化。機敏性に欠ける反面、冬場のダートなら我慢比べに持ち込めるといった点を見過ごしてはならない。昨3月の再現が可能。
最後に2歳戦で日曜の若竹賞からピックUPするのはディロス。あり余るパワーを制御できないのが現状で荒削り。そのウィークポイントが前走では露呈した。従って、広いコースよりコーナーで多少置かれる感じがベター。脚を温存できるからだ。テンションの高さを抑える為に美浦での調整はセーブ気味だが、ラストでビッシリ追った直前では同馬特有の力強いストライド。少なくとも、2勝目マークまでに時間を要す器ではない。
2歳時と異なり6F追いで鍛錬を積んできたダークナイトムーンが本来なら相手本線。唯、ここでは敢えてトーセンスーリアをライバル視。中央に転入して初戦となるから当然ながら芝は未経験。しかし、バランスの取れた好馬体で首を上手く使ったフォームと完成度は高い。美浦では全て4Fからの調整だが、追えば幾らでも伸びそうな身のこなしで周りのレベルUPにも即対応できそうなセンスも持ち合わせている。
柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。
柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。