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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2018年05月10日(木)更新

テン乗りでも真打ちはやはりアエロリット

ヴィクトリアMは例年通りの混戦模様。本来なら、現4歳のトップを行く筈だったソウルスターリングのスランプがそれに拍車をかけている。3頭併せでグンと伸びた復帰戦とは逆に今回は単走で丹念な乗り込み。その効果か、直前でも道中は鞍上とのコンタクトも取れていた。反面、GⅠに向けて馬を追い込む調整が叶わなかったは事実。前走のように自己完結といったシーンは避けられそうでも半信半疑の域は出ない。

4連勝と快進撃が続くミスパンテールは底を見せていない段階。支持を集めるのにも頷けるが、それであれば俎上に載せなければならないのがデアレガーロ。こちらも充実一途。大竹厩舎らしく直前は4Fからのしまい重点だったが、前週までにハードな併せ馬を繰り返しているのだから合点は行くし、全身を使ったダイナミックなフォーム、実績で劣るのは否めないが、目下の勢いだけでも通用してしまうのが牝馬GⅠ。上位を脅かすまでになった

唯、真打ちがアエロリットといった点には異論を挟めぬ筈。元々が木曜追いの予定。唯、水曜の大雨でウッドか坂路かの両天秤。結果、坂路で時計は4F53秒9。勿論、テンションを抑えるテーマがあって流した程度だったが、それはいつものパターン。元々、1週前にはウッドで負荷をかける併せ馬消化。シッカリと追われての先着、力の籠ったフォームとバランス良く発達した筋肉が実に印象的であった。

一旦は呑み込まれそうになった中山記念では盛り返しての2着。厳しい展開と一線級相手の混合戦で結果を出したのだ。牝馬同士の路線を歩んできた組以上に評価されて然るべきだし、そこが明らかに急仕上げで少々重かったことを思えば価値絶大。スッキリした状態で美浦入りした今回は仕上げのスタート地点からして違うということ。小細工無用の設定は望むところで、昨年のNHKマイルが示す通りのピンポイントぶり。テン乗りには難しい気性だけに戸崎に御せるかが鍵という点は承知でもそれを疑ってしまえば何も始まらない。能力とデキを最優先。

土曜メインは、安田記念を占う意味で重要なポジションにある京王杯SC。当然ながら大一番を視野に入れる面々だから、必然レベルもUP。前半3F33秒3の厳しいラップでレースを引っ張った高松宮記念でも崩れなかったセイウンコウセイは一時期のスランプを完全に脱した模様。この中間も研ぎ澄まされた馬体でスピード感は満点。特に、1週前には4Fを過ぎて一気にギアを上げると、外目のコース取りながら上がり37秒8という破格の時計をマーク。距離が限定されるタイプではない分、1400は守備範囲だし、3歳春には当舞台でのハイパフォーマンスがある。

東京新聞杯以来となるサトノアレスは、藤沢厩舎らしく入念な過程を踏んでの臨戦。5F70秒3と最終追いがセーブ気味だったのは、強く追う必要がないほど体の線がシャープだから。問題は初距離になる1400。どちらかというとユッタリと運ぶことが持続性ある末脚を生む。従って、この距離特有の流れに戸惑って位置取りが極端に悪くなる恐れも。未経験の距離ということなら、同厩のムーンクエイクにより適性を感じる。サトノアレスの直前に併せ馬消化で4馬身追走からの併入。しかし、痺れるような手応えに終始してのラスト12秒4は凄い。元々の豪快さに回転の速さが加わったからこそ。初のOPだった休養前の1戦は折り合いが全て。坂の下りに気を使わなくて済む、シンプルな設定と距離短縮ならランクUPして不思議ない

ダービー卿CT組からはキャンベルジュニアを取り上げるのが妥当か。若い時に比べるとスマートさを失ったという見方を覆したからだ。今回も豊富な運動量を誇って直前でも併せ馬消化、極端に悪化した時間帯での1F12秒7も極めて優秀と非の打ちどころはない。けれども、コーナーワークでアドバンテージを得るには中山がベスト。仕掛け処が曖昧になりそうなコースでは割り引くのが妥当であろう。むしろ、この組からはグレーターロンドン。前が詰まって満足に追えないままゴール板を迎えてしまったということで全くの参考外。

脚元と相談じながらの仕上げは同馬の宿命。唯、前回時もそうだったが、昨年より明らかに歩様がスムーズなのだ。結果、1週前には渾身の6F追いを敢行できたし、半マイルからの追い切りはラストまで全身を存分に使う伸びやかなフォーム。広い府中なら紛れはないだろうし、抜群の瞬発力が1400で翳りを見せるとは思えない

ここからは他場の特別戦でまず土曜・京都のあやめ賞。ここは、去勢明けになるランスマン。昨11月からの3戦は荒さがモロに出て全く力を出せなかった。矯正を図るには少々早い気もするが、速効性を求めるのであれば仕方がないか。稽古では相変わらずスピード感◎で今回の追い切りでは道中で12秒台のラップを踏めたほど。図らずも他厩と併せる形になって、それを避ける為に外ラチ沿いに。にも関わらず、アクションを起こした鞍上に応えてゴールまで辛抱が利いたのだから、仕上がりと気性面での進歩は明らか。手頃な頭数といった点も良い。

土曜・新潟12Rはアドヴェントス。冬の中京以来となるが、質の高い併せ馬を繰り返して太目感は皆無。確かに、直前は内と外に1馬身遅れを取ったが、キャンベルジュニアに食い下がったこと自体に一定以上の評価を与えるべきだし、前後が一体となったフォームと好馬体に奥行きを感じさせる。当クラスに長らくとどまってはいるが、上のクラスに進出して結果を出している馬相手に互角といった戦績さえ。しかも、決め手最優先の新潟外回り。初コースを追い風にして壁を突き破る

土曜メインの火打山特別は昇級初戦の2頭に注目。福島での勝ち時計は水準に過ぎぬシュピールカルテだが、前に引き離されそうになった直線入り口からしぶとく脚を使って捕らえたのが立派で、前々から思っていた通りの砂適性。50mとはいえ、今回は前回以上に追走が楽になりそうだし、より負荷のかかるウッドでの追い切りと意欲満々。最外での馬なり先着で動きは更に洗練されている。

ハンデ抽選の対象だが、3月の中山が鮮やかだったミッキーワイン。向正出しでの5F追いでは追走しての併入。ハロー明けのラッシュ時にも関わらず、それと分かるパワフルな動きでひと皮剥けたと実感。それだけではなく、1週前にはアエロリットのパートナーという栄えある地位を獲得。先行したアドバンテージがあったとはいえ、1馬身差と食い下がった中身の濃さにも触れておく 。

プロフィール
柴田卓哉

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。



柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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