能力比較が難しい段階で行われる新潟2歳Sが今週のメイン。2年連続で関西馬に凱歌が上がっているが、それを覆すべくシッカリと仕上げたのが美浦の2騎。西高東低とは断じて言わせぬだけの器。
まずはアンブロークン。デビュー戦は乾き切っていない馬場にも関わらず、追い出されても安定したフォームに終始。芝1800という素質馬が集まり易い条件に相応しいメンバーの中、2着馬に迫られると再び脚を伸ばす味なレース振りであった。
しかも、過程として残り2週で一気にピッチを上げるといったパターンで余裕残しの体つき。対して、今回は目標を立て易い状況だけに仕上げもスムーズ。1週前は1馬身遅れだったが、古馬OPを相手に行き出しで4馬身追走という高いハードル。むしろ、それを難なくクリアーした上に、直前の単走でも楽々と5F68秒7をマーク。研ぎ澄まされたといった形容が当て嵌まる全体像からも上積みは大きい。
ジョディーの最終追いは併せ馬。追走する形から追い出されると一気にギアUP。外の3歳に対してラスト1Fだけで1秒3も突き放したのだ。460キロ台だった初戦、数字以上の厚みを感じた反面、この中間を思えば明らかな太目だったわけ。シャープな体のラインになって柔軟性をより生かせるようになったということ。こちらの上昇度も強調しておきたい。
前走の1分35秒9が突出しているわけではない。しかし、楽にハナを切れたとはいえ、鞍上とのコンタクトがシッカリ取れての道中から手応え通りの伸び。上がりのラップでラスト1Fが最速というのだから底知れぬ。先週の札幌でOP勝ちを果たした2着に対してはモノが違うと思わせたほど。来週の新潟記念にはメートルダールが控えている戸田厩舎、新潟ラスト2週からの快進撃が始まそう。
栗東組で支持を集めそうなのがエルモンストロ。1分34秒9の時計は評価できるし、直線で引きつける余裕さえあった。唯、新馬戦にしてはペースを落とさぬ逃げが功を奏した側面もある。つまり、決め手比べになると分が悪くなるパワー型という見立てが妥当ではないか。それならばケイデンスコール。2走前の中京は勝ち馬が示す通りのレベルで初勝利はワンランク上の末脚を披露ととどまるところを知らぬ。同じ舞台を既に経験している強味も。冒頭の2頭を加えた三つ巴と考えている。
日曜、もう1鞍の注目はOP戦、芝1400の朱鷺S。サマースプリントシリーズの2戦で振るわなかったワンスインナムーンの巻返しに期待が集まる。当然だ。昨年の覇者でそこをステップに秋のGⅠではあわや2着といったシーンまで。復活に向けて余念がないと見做したいが今ひとつピンとこない。確かに、1週前のウッドでは3頭併せでの先着。が、追い出されてからの加速にタイムラグがあったし、実際に1F13秒0。少々重苦しかったのだ。これで直前に再びウッドというなら分かるが最後は坂路を選択。近走はこのパターンだと期待外れだけに、新潟替りということだけでは飛びつけぬ。
それとは対照的にデキ文句なしがアイライン。レベルには疑問符のつく前走で4着。唯、前残りの展開でコースロスもあったことに加え、自身にとっては忙しい距離でエクスキューズはある。しかも、更にピッチを上げた中間には3頭併せで、4F50秒4~上がり37秒1という破格の時計をマークできたほど。全身を余すことなく使ったダイナミックなフォームでとても牝馬とは思えぬ。ベストの1400で弾けそう。
ここからはダート1800戦に焦点を当ててまずは土曜11R。5月の府中で復活の兆しを見せたのがリアファル。3歳時には新潟でのレパードSで惜敗とコース実績もあるのなら、その実力を素直に評価する手も。唯、本質はステイヤーで間隔が開いたこと、テン乗りになる石橋修と不安材料には事欠かぬ。ここは○が妥当か。同じレパードSでの好走を取り上げるなら昨年度2着もローズプリンスダムに一日の長があるのでは。
1分49秒1の決着だった名鉄杯は当然ながら息の入らぬ流れ。それでも最後は2着馬に迫る脚を見せたのだ。チークPの効果覿面といった点はあるが、シッカリと稽古を積むことによって3歳時のハリを取り戻せていることを見逃してはならぬ。今回にしてもここ2週で馬場の外目を選んで負荷をかけた。それがパワフルな動きの源泉になっている。春から暑い時期に上昇気流に乗るタイプと割り切って良いのでは。
土曜の瀬波温泉特別は1000万下で、同日のメインと両睨みになっているタイキフェルヴールの動向が大きく左右しそう。唯、十分に乗り込んだショーム◎で良いのではないか。実はこの2頭、昨12月の対決でタイキFに軍配。けれども、荒削りなショームが取りこぼしたと総括すべきレースだったし、小回りの福島で早目スパートが可能だったように、幅を広げているのは明らか。直前は15~15程度の単走と目立たぬが、今開催2週目のレパードSを除外されたほどだから乗り込み量は豊富。実際に張りつめた雰囲気で稽古での推進力には並々ならぬモノがある。エンパイアブルーを始め、相手の質が高いのは望むところ。
土曜7Rはムルシェラゴ。2歳秋の初勝利はレコードというポテンシャルがありながら未だ1勝クラスというのは安定味に欠くから。けれども、前後半差3秒に近い流れでも2着争いに加わった前走でひと皮剥けた。気に任せた稽古になりがちだった冬場と異なり、シッカリとセーブしてからしまいを存分に伸ばすというメニューを難なく消化できるようになったからだ。現に、1週前の一杯追いもそのパターン。加えて、水曜の併せ馬は前に馬を置いての6F追いで目論見通りのペースUPが叶っての併入。ワンターンがベストでも少々の無理があってこそ他との違いが際立つことが明らかになった今、矯め殺しの競馬にはならぬ筈で、その形で脚力を見せつける。
日曜3Rの3歳未勝利、次開催で一応の決着を迎える時期だから待ったなし。サトノオーサムほどの能力なら取りこぼしは許されないわけ。何せ、6月デビューで経験馬相手に連対確保。直後には大敗を喫するが、初戦の反動というか、平常心を保てなかっただけ。従って、間隔を開けたことで心身ともにリフレッシュした上に、動きも迫力満点。特に、最終追いは格上が4馬身先行という態勢。にも関わらず、並びかけた直線では外を圧する印象で4F53秒3。リズム良く進めた道中だったし、自らハミを取って集中力をラストまで維持できたから非凡さがダイレクトに伝わってきた。
柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。
柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。