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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2018年11月29日(木)更新

中央でのGⅠ制覇に待ったなしルヴァンスレーヴ

チャンピオンズCの追い日は生憎ながら深いモヤに覆われた中。普通なら日の出とともに一気に晴れる筈だが、一向に好転せずに3度目のハロー明けでさえ視界が利かなかったほど。また、巡り合わせが悪いことに、GⅠにエントリーがある3頭は全て早い時間帯の最終調整だったのだ。従って、この水曜以上にそれまでの過程に重きを置かざるを得なくなる。

盛岡以降は坂路中心と調整パターンに変えたルヴァンスレーヴがウッドに切り替えたのは先週の土曜。準OPを1秒余り先行させての5Fスタートで直線では内に。確かに、最後は及ばなかったが、前に迫る迫力は前走以上と断言できるし、バランス良く配置された筋肉を駆使したフォーム。最後に遅れたのは気を抜いた為で、これは同馬の特徴。元々、稽古で速い時計をマークすることのない、典型的な実戦派なのだ。キャリアの中で取りこぼしたのは、ソエ明けという明確な理由のあった4月の中山のみ。僅か7戦目にしてチャンピオンホースを完封したポテンシャルに疑いを挟む余地なし。

シッカリと馬を追い込む調整で臨んだのがJBCのノンコノユメ。ピーク近くまで達していたからこそのG前の鋭さだったから、直後からは微調整程度で十分だったということ。とはいえ、1週前は単走だったにも関わらず、5F70秒1と稽古駆けしないタイプとしては上々の時計で馬体のハリは目立っている。去勢馬としての完成域は間近といった風格をそなえているのが心強い。マイル以下での決め手比べがベストだとしても3年前の2着馬。守備範囲の広さには相応の敬意を表すべき。

あと1頭のセンチュリオンに関しては、この馬なりに順調といった評価のみ。木曜の好時計でも脚にはお釣りがなかった上に、そもそもがGⅢレベル。ここでは荷が重い

秋の一連で3歳世代のレベルが証明された今、それを引っ張ってきた立場にあるルヴァンスレーヴを軽んずるわけにはいかぬ。関西勢で面白いのはサンライズソア。前走は5F過ぎで絡まれた為、そこからは11秒5~11秒8のラップを踏まざるを得なかった。にも関わらずの粘りには舌を巻いた。そこに比べれば展開面のアドバンテージが生まれそうな上に、逃げ馬として開眼したのは今季初頭。そこからの地力強化ぶりを優先すれば◎まである。

日曜の中京は特別戦が充実。GⅠに跨るジョッキー目当てに質の高い馬が集まるからだ。特に、9Rの豊川特別を通常の500万下と見做してはいけない。何もここを使わなくても…と思える馬だらけで、中でも叩き3走目のトゥザフロンティアにはリーチがかかっている状況。それには一目置くべきだが、武井厩舎のパルマリアも即動ける態勢。

骨折によるブランクではあっても質の高い調教を積み上げてきた。そこまでのレベルを課しても十分なだけの調整を外厩で済ませてきたということ。つまり、将来性豊かな期待馬を半端な状態で厩舎に戻すことなど、まずは避けるというのが手順。加えて、最終追いのパートナーはひと世代上のOP。先行態勢だったとはいえ、外目のコース取りで最後まで持ったまま1馬身先着。シャープな体のラインには久々を全く感じさせぬし、変則的な流れだった年明けのOPでさえ上がり最速をマークできたほどの潜在能力。鮮やかに抜け出したデビュー戦を容易にイメージできる中京なら更に。

西下する関東馬の中で最たる注目株は土曜・阪神メインのレイエンダ。セントライト記念とは異なり、今回はGⅢでも上の世代に混じってと相手強化は明らか。何せ、GⅡ勝ちのあるダンビュライト、本格化を思わせるエアウィンザーが名を連ねているのだ。しかし、その9月も前が引っ張る流れで過酷さといったら同じ開催のオールカマー以上。その中で一旦は離されかけても再び脚を伸ばしたのだ。元々、骨折さえなければ世代トップに加われたほどの素材が、目標をここに定めてレベルUPを図ってきたのだ。モヤの覆われる中のポリで外に合わせたから、恐らく道中は先行しただろうし、ラストも控え目。唯、一層洗練された馬体で弾むような身のこなし。輸送を控えての軽目は、それまでの入念な過程があったからで、持ち時計のある2000なら軽く突破できる。

水曜のポリは藤沢厩舎の主戦場となって、その中からあともう1頭。土曜・中山9Rのランフォザローゼス。こちらは遅い時間帯だっただけに、コースが見渡せる状態。そこでは5F73秒を超える時計と感触を確かめる程度だったが、ラスト1Fを切っても敢えて馬を前に置く状態でゴール寸前に並びかけるといったメニュー。唯、終始落ち着いた走りで軽やか、伸ばすところではシッカリと反応できたように数字以上に中身が濃かった。それを難なくこなせたのはセンスゆえで、華奢な一見とは異なり、アクセントが利くのはバネがある為。中山の急坂がネックになるようなこともなかろう。

土曜の中山はステイヤーズS4連覇がかかるアルバート一色に染め上げられるだろう。今秋のスタートだった京都大賞典3着が今思えば誤算。AR共和国杯はシーンのない10着は、そこでの反動と見做せるからだ。しかし、レースの上がりが33秒3とスタミナを問われぬ流れの中、58.5キロを背負っての出遅れでは仕方ない。その後に活気を取り戻したことが何よりで、現にしまい重点の直前では即反応してのラストは12秒8で回転の速さが本来のモノ。三度の57キロなら死角ナシ。

今季初頭の万葉Sを境に、ステイヤーとしての完成度を高めているリッジマンを相手本線にするのが妥当に思えるが、敢えてここはモンドインテロへの配分を厚めにしたい。

勝ち鞍のある札幌2600での躓き、京都大賞典でも見せ場なしと不振を託っている。唯、いずれも致命的とも言える乗り込み不足が祟ったと考えれば合点が行くし、今回は2週前に長目追いを消化と実に意欲的。シッカリと鍛錬を積んだだけあって綺麗な体のラインに様変わりして四肢にも力が籠っている。純然たる長距離ランナーでないのは承知しているが、コーナーを多く切る設定だけに脚を矯めることが可能で、実際に2年前には上位に迫って3着。ここまで熱心な稽古で結果に繋がらなかったとしたら、‘もう終わった’と諦めもつく。




柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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