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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2018年12月06日(木)更新

一変したグレイシアの巻返しは必至

阪神JFは関西馬2頭が支持を集めそう。特に、着差以上の強さでファンタジーSを通過したダノンファンタジーは、6月のデビュー戦からしてマイル1分33秒9。牝馬ながら朝日杯での1番人気が確実なグランアレグリアに食い下がったといった点で価値は更に上がる。このライバルが無傷で駒を進めてきたクロノジェネシス。アイビーSで抜群の切れを発揮。何と、上がり32秒5でポテンシャルの違いを見せつけたのだ。今回が初距離になるが、現状ではマイルで更にポテンシャルが引き出される筈。東上しての前走が夏場以来ながら-4キロ。その回復に手間取っている恐れもあるが有力処を占めるのは間違いない。

しかし、もう一方でこのGⅠと相性の良い前哨戦ということで、アルテミスS組も俎上に載せなければならぬ。コースは違えど、同じマイルで長い直線での攻防を経験してきた強味、中5週といった点でもこちらを本筋と捉える手は十分にある。

そこで目の覚めるような末脚を繰り出して大外一気を決めたのがシェーングランツ。出遅れて最後まで集中力を欠いたデビュー戦を経て馬がレースを覚えたのが何より。先週からポリ主体に調整を進めるようになった藤沢厩舎の一員で直前も同じコース。勿論、長距離輸送を控えているし、中間も緩めた気配なしと強く追う必要はなかったから5F70秒5で十分。とはいえ、1F地点で並びかけようとすると、ハミをシッカリと取ってスイッチオン。

滑るように加速する様に気性面の成長が表れている。現時点では極端な競馬が適している分、展開面のフォローが必要なのは確かだが、GⅠ制覇を視野に入れて当然のレベル。

シェーンGの鮮やかさとは逆に、グレイシアの前走は田辺の判断ミス。正攻法で進めた挙句、直線入り口で窮屈になった時点でアウト。経験の浅い2歳だけに自己完結となってもエクスキューズの成り立つ状況であった。つまり、アルテミスSの結果はシャフルしても良いということ。

また、1週前が坂路で直前がウッドでのしまい重点、外厩で調整を進めて美浦ではストレスを溜めないように…というのがパターンを覆したのが今回の過程。深いモヤで詳細が分からなかった先月末でもウッドで追ったのは確認できたし、直前は4頭縦列の最後尾からという身体的に馬を追い込むメニュー。しかも、鞍上とのコンタクトが取れた道中からスパートをかけて瞬く間に並びかける機敏性には瞠目させられた。シッカリとした造りで明らかにパワーUP、開門直前から雨脚が激しくなった馬場を考えれば1F12秒5も出色で前哨戦からなら別馬といった印象を受けたほど。あともう1点。出負けがあったにしても直線まで脚を温存できた9月・中山と新潟や府中は真逆。つまり、右回りであればしまいを生かす形でエンジン全開となる特性も見え隠れしているわけ。

確率2分の1で1勝馬が出走できるGⅠということで当落上にある中から注目したいのがトロシュナ。新潟でのデビュー勝ちが衝撃的でそこは明らかな太目残り。とはいえ、柔軟性に溢れる動きはが目を惹いていた。しかも、叩いた効果が覿面となった体つきでの追い切りは手応え抜群の1F12秒5。惜しむらくは一気の相手強化で、先々はともかく、現時点ではキャリア不足が大きなビハインドとなる。こちらとしては、抽選除外で登録のある中京・つわぶき賞に回って欲しい。当然ながらそのプランもあるそうだが、そこであれば新潟で見せた末脚に磨きがかかりそう。

その中京は土曜・中日新聞杯がメイン。連覇を狙うメートルダールを巡る争いといった様相に異を唱える向きは少なかろう。現に、先月中旬からの始動と昨年同様のパターンで臨むのであれば寸分の狂いもない筈。唯、1週前の6F追いの時点で去年に比べると少々重い印象を受けた。あくまでも字面には表れぬデリケートな部分ではあるが、そのインスピレーションを大事にして◎は避ける。

エンジニアが絶好のデキ。はち切れんばかりの体を誇っているからで、迫力満点の追い切りに目を奪われた。先に触れたように、開門前のにわか雨が影響を与えたにも関わらず、6F82秒3の好時計、追走併入だから中身は濃厚。AR共和国杯でひと押しが利かなかったのは距離を意識して大事に乗り過ぎた故。むしろ、展開の綾に翻弄されてもおかしくない状況で崩れなかったのが凄い。使っている強味を買って、対メートルDとであればこちらを上位に。

中山は日曜のカペラSから。10月の府中では落馬の憂き目に遭ったハットラブの条件替りは格好であった筈。出世のきっかけとなったのが年明けの中山だし、9月の大外一気にも進境ぶりを実感した。しかし、先着して当然の2歳2頭に対しての先行態勢から4F57秒4。勿論、稽古駆けするタイプではないし、以前よりスムーズな歩様で太目感もない。それでも、前回のアクシデントが尾を引いたと思える過程と控え目の最終追いを考え合わせると強くは推せない。

ここは大穴狙いでブラゾンドゥリス。復帰戦ではあえなく退いたが、気が逸る感じでの先行では仕方ない。つまり、今となっては1400でも注文がつくということ。確かに、長らくのキャリアがあって今回が初のスプリント戦。唯、絞り切れずに難儀していた夏以降を鑑みてのウッド追いが意欲の表れ。現に、5Fで1秒あったビハインドを全く感じさせぬラストの身のこなしがあった。前を窺うポジションに嵌ってレース巧者ぶりを発揮するのでは。

土曜もダート1200にスポットを当ててアクアラインSのオーヴァーライト。9月以来の昇級初戦で楽ではないが、自身の成長がそれを大きく上回る。ラッシュの最中の5F追いで69秒3。唯、見た目の印象は感触を確かめる程度。これは、それまでに質の高い併せ馬を消化できたこと、筋肉量UPで完歩が大きくなったから。まして、休養前の1分9秒2を含め、当条件2戦2勝とピンポイント。取りこぼす材料は見当たらぬ。

2歳戦は日曜・黒松賞。持ち時計を重視すればホウオウカトリーヌに一日の長がありそうだが、敢えてマイネルアルケミーを。デビュー前から稽古で目立っていたが、集中力を保てるようになるまで時間を要した。けれども、前後半差が2秒5の乱ペースに晒されながらも一旦は先頭に踊り出てのタイム差なしだった前走を真っ当に評価。しかも、トモの入りが一段と深くなってパワフルなフォームだった追い切り、古馬1000万下に対して機敏性でも優位に立った挙句の馬なり併入。1勝クラスの範疇を超えた。




柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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