あらゆるカテゴリーを明け4歳が席巻する中で迎える京都・日経新春杯。当然ながらその世代が主役を担う。特に、尾関厩舎のグローリーヴェイズが凄いデキ。菊花賞以来となるが、美浦入り1本目の4F追いで上々の時計をマークできた。つまり、放牧先でも緩めた気配がないということ。
加えて、1週前の長目追いが圧巻。相手が1000万下だっただけに、大きく先行させるメニューが楽なわけがない。それでも、直線で重心が沈んでパワーがダイレクトに地に伝わるが如く。昨秋より明らかに充実した胸前を生かすフォームでひと皮剥けた。しまい重点の最終追いでは素軽い面も見せつけたから過程としてはパーフェクトと言えるのでは。坂の下りが得手でない分、コースロスを抑えようとするとスムーズさを欠くし、それを避けようとすれば前走同様、大外を回らなければならない。京都外回りに一抹の不安が残るのは確かだが、元値の高さと急激な成長ぶり、同じ世代でライバル・メイショウテッコンに対して1キロのアドバンテージがあれば、こちらを◎とするしかない。
対する中山は3歳重賞が2鞍でまずは土曜メインのフェアリーSから。例年通り1勝馬が大半を占めるメンバー構成で、そこに属するグループでは確率3分の2。
確実に出走できる中からはホウオウカトリーヌ。道中で矯めが利くようになって真価発揮という到達点に達したのが昨年。加えて、暮れに差し切り勝ちを演じてからは緩める気配は一向にないままここに照準を合わせているのだから、馬体も洗練されたまま。追い切りは5F69秒台と突出したタイムではないが、追走から外に合わせる中身は数字以上で好調は間違いないところ。唯、スムーズに運べるのはスプリント戦だったからこそ。体型的にマイルも守備範囲ではあるが、乗り方に注文がつくのは否めぬ。
1勝馬ながら1番人気まであり得るのがコントラチェック。抽選対象ということなら、9月の取りこぼしが如何にも痛かった。とはいえ、1000m通過61秒6で逃げ切った馬を捕らえられなかったことに瑕疵はない。しかも、当時は脚長に映ったように、上半身に筋肉がつき切っていない状態。にも関わらず、上がり最速、コーナーワークが甘かった分のクビ差。逆に、全体のバランスが良化して充電効果は覿面。ウッドでの3頭併せで遅れたのは、追走して最後までセーブした為。麗しい馬体、直前でウッド入りできたこと自体に進歩を感じ取るべきだろう。
下馬評が低い中で取り上げたいのがエフティイーリス。初勝利マークの10月は+22キロ。つまり、見切り発車だったデビュー戦から一息入れて目論見以上の成長を見したわけだ。しかも、その勢いはとどまらぬ。年明けのウッド1本目でパートナーを瞬く間に突き放しかと思えば、直前の3頭併せでは最後尾から内にもぐり込んで痺れるような手応えに終始。ゴムマリのように弾むフットワークは休養前には望むべくもなかったほどで、厚みと柔軟性といった点で格段にUP。タフな中山がピタリといった身のこなしに賭ける手も。
月曜の京成杯も1勝馬が9頭にも上る。唯、将来を嘱望される良血が集って今後の牡馬戦線に一石を投じることになるのではないか。当初の予定で◎候補だったダノンラスターは木曜追い。如何にもキャリア不足といった東スポ杯でも0秒3差まで迫っていたからだ。直前のしまい重点は織り込み済みで、先週の6F追いもあったから仕上がり◎。しかし、直線半ばから気合いをつけたにも関わらず、1Fは13秒0。ポテンシャルが垣間見えるシャープな捌きには一目置きたくなるものの、ハミに凭れるようなラストがあった分、期待外れと受け止めざるを得ない。間隔が開いて逞しくなったといった面も感じられず押さえ程度か。
となると、レコードで決した葉牡丹賞組を主力にするのが妥当。やはり木曜、朝一番の併せ馬だったシークレットランは田村厩舎らしく道中からピッチを上げる。内の古馬とでは4角手前で‘勝負あった’といった感じ。けれども、そこから意外にも抵抗にあって大きくは突き放せなかったし、セーブ気味のラストではあっても12秒台は欲しかった。とはいえ、稽古でひと際目を惹く馬ではない分、良い意味での平行線という総括。
水曜に追い切ったランフォザローゼスはハロー明けでの2頭併せ。当然ながら追走する態勢から直線へ。馬を前に置いての自分のリズムを崩すことなく、並びかけてのフィニッシュで外に対しては断然優勢の脚色。非凡さを十分に物語っている。暮れの1戦がポリだったからそれ以上に負荷をかけられたということで上昇著しい。その前走が淀みのない中でも正攻法、勝ち馬に一気に前に出られながらも最後まで食い下がった価値ある2着。謂わば出し抜けを食ったと言える上に、シャープが増したのであればシークレットランとの逆転は濃厚になった。
しかし、◎は別に。最終追いがポリだったラストドラフトだ。十分に助走を取った上でペースUPは5Fから。その地点と半マイルまでは2馬身後ろだったが、そこから抑えた為に上がりでは4馬身差と広がった。ここからが凄い。4角では内より3頭分外に進路を取って少しだけ促すと瞬間移動のような速さで抜き去ったのだ。その後は流した為に2馬身先着にとどまったが楽走に近い形での1Fが12秒ジャストである。3歳初頭といった範疇を遥かに上回るレベルで底知れないわけ。まだ華奢な印象があるし、切れに頼り切った段階だから1F延長と急坂のある中山、キャリア不足が懸念材料になり得る。が、全身バネといった身のこなしでスイッチが入れば‘跳ぶが如く’そのスケールに賭けたくなった。
重賞がなく谷間にあたる日曜も2歳戦を取り上げる。ここも当カテゴリーを占う意味では重要なレース。それだけ充実しているということ。まずは再び戸田厩舎でダイシンインディー。掛かって終わった10月・府中は度外視して良い。バックSが長いコースでセーブが利かなかっただけと言えるからだ。逆に、今回はコーナー4回で制御するのは容易かろう。実際、9月の当条件では後続に影を踏ませなかったのだ。Dコースの5F69秒1にしても外を窺いつつでの1馬身先着と態勢は整っていて巻き返し必至。
身体能力ならシハーブが最右翼。余裕のある造りだったデビュー戦の直線は独壇場だったし、大型馬だけに叩いた上積みは絶大。ひと間開いたが、坂路とウッドでジックリとレベルUPを図った結果、より伸びやかなフォームを直前の3頭併せで見せつけたのだ。現状ではワンターンが理想でも難なくカバーするシーンも。
あとはデアフルーグ。新馬戦に臨むにあたって質の高いメニューを課せられても全く動じなかったほど。けれども、直前がゲート練習から向正でラップを刻んだのみ。その分、余裕残しの造りであった。その段階でもラスト1Fの12秒7は流した程度だったから凄い。全体の時計も優秀だし、周りと固められる形になっても平常心を保てたように完成度の高さはピカイチ。直前を含め、3頭併せを2本こなしてシェイプUPできたのは確実だし、5F70秒を超えるタイムでもパワーと持久力が伝わってくる動き.前走の好タイムでさえ大幅に詰めることになるのでは。ここは無傷で通過したい。
柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。