例年になくメンバーが揃ったのが土曜メインの中山牝馬S。何せ、昨夏を境に3連勝を成し遂げた勢いで秋華賞でさえ2着に残ったミッキーチャームの参戦があるほど。唯、秋以来に加え、同型の存在がネックになりそう。となると、道中の緩いペースとは裏腹に直線の攻防が激しかった愛知杯組を重視したくなる。
中でもノームコア。秋華賞をスキップしてのエリザベス女王杯という選択が裏目に出たが、そこでも崩れずに5着。更に、暮れは出遅れが最後の最後に響いての0秒1差と‘負けてなお強し’当初の予定は火曜追いだったが、降雨の影響で一日延びての最終調整。とはいえ、微妙な狂いは無視して良いほど前週までに鍛錬を積んでいたし、4F過ぎての加速ぶりが好調を物語っている。むしろ、愛知杯時より厚みを感じさせる分、ラストも余裕綽々での3馬身先着と万全。思えば、飛躍を実感させたのが同じ中山の紫苑Sというのだから、コース適性でも優位に立てる。
4度目のハロー明けに登場したワンブレスアウェイには勢いがある。ゲートが安定しない時期があって伸び悩んだが、上手くポケットに収まる味な競馬でGⅢ初制覇だったのが前回。コントロールが容易くなったことも大きい。現に、鞍上の意のままに進んで迎えた直線では先行馬との差を一気に詰める鋭さを最終追いで披露。また、据え置きの54キロで迎えられる点でアドバンテージを得ているのだ。昨年の11着は忘れて良い。
昇級した愛知杯では伸びそうで弾けない4着だったウラヌスチャーム。それ以来となるが、帰厩後1本目のウッドで5F追いが可能だったほど調整が進んでいた。結果、最終追いが6F81秒8の猛稽古。ゴールでは1馬身及ばなかったが、調子を上げている1000万下に対して1秒以上のハンデを背負えば仕方ないし、1走ごとに力が漲ってきた点でも充実一途。問題はバテない強味が際立つ状況が欲しいということ。2000だった前走でも少々短いと思わせただけに、1F短縮では最後の△までに入るかどうか?
前年度2着のフロンテアクイーンにとっては。レース巧者ぶりを生かせる恰好の条件。逃げ馬を射程に入れて進めては分が悪くなる流れのターコイズSでさえ僅差。しかし、一息入ったことで始動が遅れたのが少々痛い。軌道に載ってからの定番が坂路追いだったのに対し、直前の2週でウッドを選ばざるを得なくなったからだ。3頭併せの真ん中で余裕の手応えだったにしても漸く間に合ったという印象。昨年と同じ54キロなら初重賞ゲットと行きたいところだが…
古馬の重賞はもう一鞍。大阪杯の前哨戦となる金鯱賞は、中京の開幕を飾るに相応しい充実メンバーで、関西優位は明らか。中でも馬が変わったエアウィンザー、昨秋の天皇賞でも上位に絡んだアルアイン、更に牝馬のトップクラス2騎の中からのチョイスが妥当。得意コースということで、目論見通りの良化ぶりを示すメートルダールでは少々荷が重いか?
戸田厩舎からは他を取り上げる。まず土曜・トリトンSのダイトウキョウ。戦法が限定されるわりに昨秋からの着外は10月の府中のみ。そこはレースの上がり33秒4、直線で内から寄られて万事休す。エクスキューズはあったのだ。しかも、年明けからは丸味帯びた体でフットワークにも弾力性がある。中1週ながらウッドに切り替えての4F追いで充実しているし、昨年は鋭く伸びての2着。同じ55キロのハンデで、間隔を詰めて使える点で今回は当時よりもチャンスが広がっている。
もう1頭が中山・アネモスSで桜花賞へ弾みをつけたいアイワナビリーヴ。十分に乗り込まれたデビュー戦は青写真通りに通過。前を射程に入れつつのレース運びもさすがだったが、ラスト1Fの伸びが尋常ではなかった。立ち姿からして気品溢れている上に、更にレベルUPした中間がある。前回時、息を整える程度だったポリから直前はウッドでの5F追い。それも外をいつでも捕らえられるといった余裕があっての併入で、少しでも促せば11秒台も確実と思わせた。キャリア不足を言い訳にはできぬ器。
あと、ここで狙ってみたいのがエフティイーリス。フェアリーSは道中でセーブするあまり、踏み出しが遅れた分の4着。この欄で推奨したように、当時から稽古は目立っていたが、それに磨きがかかっているのだ。リズミカルだったとはいえ、直前が5F72秒を超えた前回に対し、2週連続で強く追われた結果、最後には5F67秒5と質UPをアピールするには十分な時計。筋肉量が明らかに増えて推進力が増した故。その体つきになれば少々強引でも容易には止まらないだろう。
同じ金成厩舎で勘定に入っているのが日曜9Rのイェッツト。夏以来だった年明けに快勝と上々の滑り出し。完全に立て直して臨んだ前走があったからこそ反動は全くない上に、前開催をスキップしてここに。エフティイーリス同様、蛯名が跨っての最終追いが追走して内と、これも判で捺したよう。唯、やはり定石通りにペースUPして実にシャープな身のこなし。プラン通りの同時入線で以前よりバランスの良い走りになったのが何より。トモが薄かった3歳初頭でもGⅢ3着があるのだ。1000万下で取りこぼしてはならない。
平場戦は日曜5Rのグランヴィスタ。暮れのデビュー戦は大型馬らしく太目が残った。追い切りが単走での4F追いではむべなるかかな。加えて、ゲートがモッサリで1角を過ぎてもレースに参加していない状態。にも関わらず、外々から長く脚を使っての4着。4角では外に振られたし、シッカリと脚を使った直線でもラスト100で寄られるシーンさえ。能力に疑いを挟む余地がない上に、1F延長の外回りならよりスムーズに追い上げられる。
最終調整はしまい重点の3頭併せ。ということは、機敏性が担保となるメニュー。その中にあって最後尾から自然体で追走しつつ前を窺えたのはシェイプUPが故で、ポテンシャルが引き出すには十分過ぎる要素。何せ、行き出しで2馬身のアドバンテージがあったホウオウカトリーヌ(阪神の桜花賞TRに臨戦)に対して、どちらが格上か分からぬほど圧倒しての併入だったから目を瞠る。その動き見せつけられたのだ。未勝利クラスなどは軽く吹かす程度でも圧倒できると考えるのが自然ではないか。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。