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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2019年05月23日(木)更新

高速ターフならより映えるダノンキングリー

無傷で大一番に臨むサートゥルナーリアが優位に立っているのは間違いない今年のダービー。唯、癇性の強い馬だけに、一冠目が2月以来のぶっつけだったからといって、劇的なまでの変化はないだろうし、思わぬ抵抗にあったのも確か。従って、皐月賞に対するリスペクトを前提とするのであれば、そこでの2、3着が再びの脅威になる。

3月からの上昇カーブが鮮やかなヴェロックス◎としたいところだが、ダノンキングリーも凄いデキ。萩原厩舎だけに、美浦での調整期間は短いが、それが青写真通りなのは1週前の猛アピールが示す通り。何せ、長目からの行き出しながらハイピッチで飛ばす道中、5Fから既に14秒0を刻んでもラストまで手を緩めるシーンなし。にも関わらず、外目を選んで馬体を大きく見せたように迫力満点。直前のポリで5F70秒を超えるタイムと控えたのが頷けるほど張りつめた雰囲気を発しているし、このパターンは暮れから続いている、謂わば‘勝利の方程式’

本質はマイラーと未だに思っているが、完成度の高さに裏打ちされたセンスをもってすれば2400にも対応できそう。何より、速い上がりの決着になりそうな馬場コンディションが後押しに。

同じく水曜のポリで追い切られたのがニシノデイジー。こちらもしまい重点だったが、半マイル過ぎのスムーズな加速があって3F37秒7。唯、ピークだった皐月賞が真っ正直なレース運びで伸びを欠いた。重賞勝ち、ホープフルSに表れているのは、コーナーを上手く利用して距離を保たしているといった点。前走からの2F延長はアゲインストになる。

ウッドではランフォザローゼス。青葉賞からの間隔を考えれば、馬を追い込むようなメニューは避けたいし、実際にそう。とはいえ、古馬OPに対して互角以上だった先週があった上に、直前の5F72秒3にしても実にリズミカル。完成形には遠いといった段階だが、当距離を経験した強味と、そこで示した適性ぶりから連下の一角には加えるべきか。

木曜はシュヴァルツリーゼ。厩舎の一番目の組で向正出しの4Fから。当然ながらしまい重点になって道中からの2馬身リードを保ったままのフィニッシュは1F12秒6。目立つ数字ではないが、周囲を圧する迫力で異彩を放っているし、前走以上に弾力性のある身のこなし。急上昇と結論づけて良いのだ。その皐月賞は馬混みを突こうかといった作戦が裏目に。脚はあっただろうが、気後れした感じでゴールを迎えてしまった。逆に言えば、消耗がなかった上での経験値UP。それが、抜群の最終追いに繋がったということ。広いコースでの変り身に期待が高まる。

ダービーデーの掉尾を飾る目黒記念、ハンデ戦で掴み処がないといったのがこれまでの傾向。それに異を唱えるようにブラストワンピースが参戦してきた。昨年の3歳最優秀牡馬であれば貫禄が違う筈。しかも、当欄で指摘したように大阪杯は幾分重いといった印象だったのだ。とはいえ、当時でさえ馬体に幅が出たといった側面もあったから、着実な成長と捉えるべきで、6着とはいえ0秒3差。上位陣に比べると意気込みで劣った感。対して、気温の上昇とともに新陳代謝が活発になったと思わせる全体像がある。

勿論、大竹厩舎の追い切りは4Fスタートが定番で、それならば上がり38秒0をセーブ気味でマークしても当然。が、体のラインがより明確でメリハリが違う上に、伸びやかなフォームと今季初戦を上回っている。この秋、仏遠征を表明して、そこからの逆算でここを選んだ以上、恥ずかしい競馬では終われない。

日曜は特別戦からもう1鞍。1600万下の薫風Sが多士済々で面白い。まずはスウィングビート。クラス慣れを実感させた前走が、外々のコースロスがあっても際どい2着。道中で壁を造らなくても収まりがついた上で披露した差し脚には一目置くべきだし、今回の追い切りはウッドでの3頭併せ。5F71秒3でも坂路で軽目だった前回時より負荷をかけられた点は強調できる。実際に捌きは小気味良かった。

同じ立夏Sからということならショームも。そこでは鞍上に反抗しまくる3角までがあって、なし崩しといった形容がピタリ。3月・阪神が初の1400で急がされた反動と見做せる上に、変則日程で月曜の15~15が最終調整。悪条件が重なったわけだ。対して、OPを含めた質の高い併せ馬で余力十分に先着。ポリ中心だった冬場以上にパワフルだっただけに、巻き返せる態勢になったと考えるべき。

もう1頭がブライトンロック。コーナー4回の中距離では脚の使い処が鍵といったタイプに変質。降級後に不振を託っている所以。とはいえ、同じ左回りの中京で上がり最速をマークしたのが2走前と峠を越えたわけではないし、ウッドでの単走を繰り返した挙句の今週でも一杯追いと鍛錬に余念なし。強敵を下して2勝目を挙げたのが3歳時の当舞台。ワンターンの設定なら持ち前の決め手を見直す手があって良い。

土曜の特別戦からは葉山特別のテンワールドレイナ。2月の中山がワンサイドで1分33秒6以上のインパクト。矢野英厩舎の定番でラストは4F追いだったが、3頭縦列の最後尾から物凄い推進力での併入。入りが15秒1とユッタリとした反面、スイッチが入ってからの変り身鮮やか。能力はあってもそれを生かし切れなったひ弱さが一掃されたということ。その段階でも高いレベルで安定していたのだ。中山巧者のイメージは捨てて良い。

平場も1000万下で攻める。土曜12Rで取り上げるべき第一はアームズレングス。何とも痛いアクシデントが今開催3週目の中止。唯、そこに至る過程での最終追いが4F61秒5で十分だったほど入念。再仕上げを強いられたというより、微調整で十分だったわけ。結果、4F追いながら大きく追走しての併入で実にシャープな捌き。真っ向勝負を挑んでも脚が続くマイルなら紛れもなかろう。

ライバルはゲンパチカイナルでこちらを中心に据えても良いぐらい。人気に反した前走が詰めの甘さを露呈した形。唯、長休明けながら、ポテンシャルを発揮したことによって結果的には押せ押せのローテに。従って、適度に間隔を開けたことでリフレッシュを実感させる造りになった。また、コンタクトを取りつつの行き出しから徐々にペースUPと理に適ったメニューを消化できたのだ。本来は前目を窺いつつが理想で、2月に直線だけの競馬だったのはレース勘が蘇っていなかった為。今のデキなら主導権を握った上で持ち時計通りに走れる筈。






柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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