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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2019年05月30日(木)更新

明け4歳同士 正に雌雄を決する1戦

GⅠシリーズのファイナルを飾る安田記念は、それ相応の豪華さ。勿論、花を添えるのは凱旋帰国となったアーモンドアイ。当然ながら心配されるのは海外遠征後ということ。しかし、検疫→外厩の経緯で調整が上手く進んだと受け取れるのは、美浦入り直後にして麗しい馬体を誇示していたから。

加えて、帰厩後の追い日1本目が6F行き出しで楽走といった見た目でも好時計。体をしなやかに使っての見事なフォームに終始していたのだ。そして最終追い。生憎の雨ながら馬場整備後に正面からのウッド入り。十分に助走を取っての3頭併せで先頭との差が1秒4あっての6Fスタートであった。そこでは、無理することのない道中から、徐々に差を詰めると定石通り最内へ。やはり凄い。全身バネといった形容がピタリのアクションで段違いの加速ぶり。結果、ルメールが促す程度でも外2頭を切って捨てたのだ。

あまりに速い時計続出となって逆に紛れが生じていたというのが今シリーズ。けれども、切れ、パワーで頭抜けたスーパースターが調整の狂いなしに臨むのだ。無論、桜花賞での1分33秒2が示す通り、マイルで翳りが見えてくることなどなかろうし、絶対的な能力が違う。それに敬意を表すべきだろう。

ライバルとして挙げられるのはダノンプレミアム。3歳時、弥生賞の時点で牡馬部門であれば無人の野を行くが如し。直後からブランクが如何にも不運だった。現に、大阪杯の前哨戦で後続を寄せつけぬ完勝とポテンシャルを見せつけいる。

能力ゆえにこなせる距離には幅があるが、サウジアラビアRC→朝日杯といったマイル路線を歩んだ結果の2歳チャンピオン。また、マイラーズCが極端なスローからの抜け出しと、謂わば‘調教代わり’を経てだから段階を追ってのレベルUPも叶ったわけ。ローテーションということならアーモンドアイに優る。

以上に割って入る候補として強調したいのがアエロリット。昨年の2着馬で、当時もヴィクトリアMで詰めを誤った直後と、再現可能なシチュエーション。現に、この中間はウッドのみで最終追いも4F55秒9のしまい重点ながらリラックスした走り、ラストではスムーズに体を運べた上にシャープさも伴っていた。前回時、1週前のウッドで格下にアオられ気味だったことを思い起こせば、今こそ本来の姿。1000m通過56秒1の逃げと快レコードの立役者となったことでガス抜きにはなった筈。その反動より、平常心を保ちえる状態に達した点を取り上げたい。

あとはステルヴィオ。阪神のGⅠで思わぬ大敗を喫した直後。馬を追い込む形で勝負を賭けたのが裏目に出ての-12キロだっただけに度外視すべきだろう。木村厩舎の定番で、美浦ではストレスを溜めない点に留意した調整ということで立て直しには成功した筈。それは、ここ2週のラストに表れていて、いずれもゴール板を馬が承知しているかのような加速ぶりだし、流麗なラインを保って切れ味満点。唯、凄味までは感じない分、昨秋・毎日王冠で先を越されたアエロリットに対してや、2歳時の直接対決で2連敗といったダノンPの存在を考えると、大勢逆転まではどうか?

同じ厩舎なら日曜9Rのモンテグロッソに食指を動かされる。昇級戦となっての相手強化は承知。けれども、軌道に載ったというか、更にレベルUPを図った過程がある。特に、最終追いは異例の長目追いで6F82秒4。緩みのないラップを刻んだ挙句、併走馬をちぎった上に前を行く同厩の3頭併せに迫ってのゴールと迫力◎。3歳時の消化レースは5戦のみと体質の弱さと背中合わせだったにも関わらず、青葉賞で上位を窺えたほどの器。パンとした今ならばもっと上を見据えなくてはならぬ。

他はダート戦にスポットを当てる。まずは麦秋Sでここからはサザンヴィグラスを推奨。先月の京都は抽選除外で決して目標としたわけではなかった。加えて、少々踏み遅れてジリジリとしか伸びなかったといった側面も。逆に、距離に対する融通性は証明できたし、コーナーワークが雑だったのが右回りといった点で府中替りは好機。しかも、セーブ気味で単走に終始した過程から脱しての併せ馬消化で、ラストまでシッカリ気合いをつけての4F53秒3と中身が極めて濃厚に。

変り身を見込めるというならアンティノウスも。昨10月からはオール坂路の調整だったが、ウッドに切り替えた。しかも、アーモンドアイのパートナーを務めることに。勿論、大きく及ばぬ内容で、2週にわたって4馬身遅れ。けれども、ラスト1Fまでは食い下がったことで、余裕残しだった体が引き締まった。また、去勢の効果で常識にかかったメニューをこなせたことで基礎体力が大幅UP。こちらも府中は大歓迎。

ポリの併せ馬で余裕の動きだったアメリカンファクト。5F70秒0と軽目だったが、ジックリと乗り込んだ復帰戦の直後だから微調整程度で十分だということ。何より、コントロールが利いて鞍上の意のままに反応した追い切りに精神面の充実が表れている。夏場の反動で活気が伝わってこなかった昨秋とは雲泥の差。そういった状況であれば、確実に自分の時計で走れる筈。

三浦特別では3歳ゴルトマイスターを中心視。上の世代に混じるのは当然ながら初だし、府中も未経験。唯、使い込んでの効果が覿面だった前走の1分51秒3は掛け値なし。身体能力を前面に押し出すことができた結果で、誤魔化しが利かぬ広いコース、長い直線なら個性が更に際立つ。無駄が削ぎ落とされた雰囲気と入念な併せ馬に加え、直前が余裕綽々での6F81秒7とまたまた時計を詰めた。この勢いに逆らうのは妥当でない。

最後が新馬戦。何と言っても注目は日曜5Rで大物同士の対決。即ち、サリオスVSアプソルティスモでいずれも世代を引っ張るであろうポテンシャルの持ち主。唯、如何せん想定段階で5頭という少頭数だけに馬券的な妙味はない。そこで土曜5RからブンロートをピックUP。クロフネ産駒という印象は捨てて良いほど素軽い動きを示している。また、ウッドでの追い切りが初だった直前でも戸惑うシーンなしと、大人びた雰囲気が何とも良い。3歳を追走しながら脚色優勢での5F69秒1には感心させられたし、それはバランスの取れた好馬体ゆえ。デビューを飾れるレベルに達した。






柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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