追い日には冷たい雨が間断なく続いてウッドは力を要するコンディション。ラスト1Fで伸びを欠いたような数字でも大きく割り引く必要がないほど。その気温とは裏腹に、春を告げる3歳のトライアルレースが東西で行われる。まずは弥生賞から。
現時点でのNO.1と見做しているトゥザワールドの牙城に迫るのは美浦組とみている。かといって、見た目が派手なデビューだったウンプテンプでは当然ながら、ない。緩い流れでの上がり33秒3を過大評価できないし、5F72秒5という追い切りからも途上段階。
ここはアデイインザライフ。馬をリラックスさせる為、直前の坂路といつものパターンを踏襲(4F53秒3)。が、1週前のウッドでは猛稽古。行き出しは6Fで僚馬を大きく追走する形でも楽々先着。しかも、大外を回りながら鞍上・戸崎の手綱はピクリとも動かぬ。
コースロスがあっての5F65秒9は破格で、全身を駆使した豪快なアクションには感心しきり。勿論、シルエットが洗練されていない今は成長段階。それでも、前走を遥かに上回るメニューを楽々とこなしているのなら、尋常でない良化ぶりと断じる。少なくとも、キングズオブザサンなど敵ではない。また、1番人気馬は直線の急坂未経験。大金星さえ。
チューリップ賞のハープスターに死角はない。相手探しになるが、そこで名乗りを上げるのがヌーヴォレコルト。輸送前の牝馬だけに馬なりでの併せ馬が最終追いだが、馬場を考えれば5F68秒4で立派。加えて、1週前には古馬1000万下を追走して併入、ビッシリ追って十分すぎる負荷をかけたのだ。確かに、速い時計の裏づけはないものの、勝負根性を物語る中間の内容と、進境ぶりをアピールした動きから桜の権利はほぼ手中にある。
西下する斉藤誠厩舎で単勝狙いができそうなのが、武庫川Sのガイヤースヴェルト。先週のウッドでの力強い動きに加え、最終追いのDコースではラスト11秒8とシャープ。もう少し前肢が伸び切っても良いように思えるが、追いすがるフラアンジェリコの好調ぶりから察すると中身は濃厚。少なくとも、ここ2走より数段上だし、飛躍のきっかけが昨春・阪神の毎日杯。得意の外回りとマイルの持ち時計を掛け合わせれば頭一つリード。
中山・土曜メインはGⅢのオーシャンS。唯、関東の実力馬にとっては1F短い。一昨年3着馬で坂路4F51秒1が最終調整だったレッドスパーダ然り、しまい重点のウッド4F53秒5だったリアルインパクトは飛びが大きいだけに1200のペースに戸惑いそう。動き絶好なのがツインクルスター。ポリでの好時計もさることながら、ギアチェンジした半マイルから3Fまでが11秒8とスピード感抜群。が、OPで通用するにはまだ時間が必要。いずれにせよ、‘帯に短し…’というのが結論。
中山の土曜は他の特別戦で手堅く。9Rのウインフェニックスだ。2度目のハロー明けに併せ馬。半マイルからの行き出しで先行して併入。4F56秒5と時計も平凡だが、直前軽目で馬にストレスを与えないパターンが功を奏する筈。その前2週の併せ馬では軽快な動きを披露。マイラーとして出世して欲しい逸材だけに取りこぼせぬ。
少頭数のスピカS。力をつけているライズトゥフェイムが評価されているものの、かなり楽をさせてのここ2週が感心できぬ。筋肉が落ちて追ってからの踏ん張りが足りない状態で危険な人気馬。好調を維持する暮れの美浦特別組が主力では。
あとは平場戦で大穴狙い。8Rのサンタクローチェだ。中央復帰戦は息ができていない状態で度外視。硬い反面、トモの入りに力がこもっているからダート向き。ウッドでの3頭併せでは手応えにも余裕。朝の一団が一区切りついた直後で馬場が荒れ出した時間帯だから、1F12秒2は立派だし、内の格上と互角の動きがポテンシャルの証し。新人Jだけに御せない恐れもあるが、その分人気になり切らないのならリスクを冒す価値はある。
日曜・中山の特別戦ではまず10R。準OPのダート戦は東西入り乱れての混戦。昇級初戦になるヴィットリオドーロは上昇一途。追走の分、手応えで劣ったが自身も1F12秒1なら及第点だし身のこなしが滑らかでパワフル。唯、本格的に加速する前にゴール板を迎えた追い切りからも広いコースがベスト。同じように好調ということなら、中山巧者ヒラボクマジックに一日の長があるか。単走ながら糸を引くような伸びで3F38秒0という時計も優秀。
いずれにせよ、現段階で未定のエーシンスピーダーの動向次第という憾みはある。それまでは勢いを殺されていた右回りの前走、差す競馬で一定以上の結果を得たスターバリオンが、東上組では魅力。
冨里特別は1000万下のハンデ戦。当クラスで安定味抜群なのがシベリアンススパーブ。唯、厳しいラップを踏んでいないのがここ2週で、その2本のみでは息保ち不安。最終調整などは先行しながら内という、謂わばアジヤエクスプレスのスパーリングパートナーと化しただけ。
それならば、ドラゴンレジェンド。朝一番のポリで単走。しまい重点がテーマでも5F67秒0~4F51秒4と折り合いピタリだったし、3F37秒台を楽々マークと一叩きの効果覿面。コーナー4回の1800実績が根拠の一つ、ダートを消化できるほどのパワーこそないが、高速設定の芝では苦しくなるタイプ。つまり、今の中山ほど合う馬場は夏の北海道まで望めぬということ。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。