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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2019年07月25日(木)更新

アイビスSDの注目は今年も森田厩舎

ロングランの新潟スタートとともに梅雨が明けそう。その口火を切るアイビスSDは名物レースとして完全に定着した。と同時に、特殊な条件だけに、他のサマースプリントシリーズとは一線を画す位置づけでもある。

注目株は、直線競馬とチークPで一変したライオンボス。トントン拍子となったのが今春で、当時に馬場を考慮すれば53秒台に突入した点も瞠目に値する。リフレッシュしてここ1本に絞ったのはプラン通りであろう。また、鍛錬の舞台をポリに移してきたのだ。輸送を控えた直前こそ5F68秒で馬なりと控え目だったが、恵まれた体を存分に駆使できた。

坂路中心で半ば手探りだった以前とは別馬。ラスト2週で併せ馬を消化できたのだから太目感は皆無だし、風格さえ滲み出てきたよう。問題は、一気の相手強化だった韋駄天Sが15番枠を最大限味方につけたということ。どうもこの馬、一完歩目が遅い。マークがタイトになる今回、内目からになると力を殺がれるシーンも。

その韋駄天Sで格上挑戦ながら2着に食い込めたのがカッパツハッチ。積極策に転じたことと良馬場でフル回転となった。それ以来となるが、外厩で十分に乗り込まれたと思わせる体つきで、矢野英厩舎独特の正味3Fで気持ち良さそうに四肢を伸ばすフォームを披露と、好調は間違いない。2キロ増しの別定戦でも軽くは扱えぬ。

唯、やはりこの舞台であればダイメイプリンセスが優位に立つのでは。追い出しを待つ余裕があっての抜け出しで圧倒した昨年が忘れられないのだ。その53.8秒が突出しているとは言えないが、スピードに任せて押し切るタイプではないから、相手なりに時計を詰めるのは容易いだろうし、そこからの1キロ増しなら許容範囲。CBC賞で一叩きというのが理想なのは間違いないから、仕上げが遅々としていたのは否定できぬ。唯、昨春から当舞台に限れば3連勝。底を見せていないと同時に、稼ぎ時はこの場所であり、この時期。背水の陣と考える。

4歳を迎えての3戦がオール最下位入線と振るわぬラブカンプーは、間隔を開けて臨んできた。デリケートな牝馬だけに、早目に見切りをつけたのが功を奏しそうで、典型的な夏馬を見做せば近走には目を瞑れる。再び森田厩舎のワンツーになったとて驚けない。

同じ芝1000の特別戦が土曜・閃光特別。ここは初芝になるナランフレグ。3歳の1勝クラスで頭打ちといった感じなのが近走。唯、前走などは質の高いメンバーの中、決してレースを投げることなく、ジリジリと差を詰めて1秒に満たない差。しかも、その距離では脚の使い処が鍵になっているように限界があるのだ。前捌きが極端に硬いといったタイプではない上に、パワフルな身のこなしが身体能力の表れ。つまり、問答無用のレース運びでもラストまで脚色が鈍りそうにない当条件への適性はかなり。一連からの2キロ減が大きな後押しにもなる。

同じ宗像厩舎でアクートは土曜・メインで主役を張るに足りる立場。何せ、昨秋からの現級5戦で4着以下なしの安定株だからだ。とはいえ、層の薄いカテゴリーであるのは否定できないし、追い切りが坂路のみだったのは一昨年春以来。ルーティンがこなせなかったことで隙は生まれる。

再び芝に転じた良血ダイワメモリーが軌道に載った。抜群の切れを見せつけた前走が1.57.8秒と目を剥くような時計で、高速ターフに対する適性が抜群ということなら開幕週は格好。正味4Fの調整で控え目だった最終追いは、既に仕上がった事実の裏返し。むしろ、適度な落ち着きを伴いながら弾むようなフォームで充実一途。

もう1頭の◎候補はギャラッド。こちらは逆に田村厩舎らしくビシビシ追われて態勢を整えた。特に、最終追いは外に合わせて手加減なしのラスト、アッサリ3馬身切り捨てての5F66.3秒で、上がりに至っては38秒を切った。確かに、現級入りして4、6着とひと押しが利かぬ。しかし、一息入れて筋肉量UPが明白な全体像で豪快な身のこなし。500万下だったとはいえ、昨秋にはスローながら目の覚めるような末脚で前を呑み込んだようにワンターンでの長い直線、フラットな新潟での上がり勝負に最も似合うタイプである。

忘れてはならぬのがベアインマインド。他4頭とともにポリ入りした直前は5Fで1.2秒前を行く馬を視界に捉えて2頭併せで実に伸びやかなフォーム。ピクリとも動かぬ手綱でも5F67.5秒をマークと狙いすましたのが露わになったのだ。昨年同様の52キロでアドバンテージを得ているし、スローが大前提になるメンバー構成。再びソツのないレース運びで上位を窺う。

日曜の勝負処は10Rでスイープセレリタス。5月以来で坂路での4F55.6秒が最終追い。唯、これまでを通じてウッドで時計を出したのは2回のみで定番の調整パターンだし、現状ではビッシリと攻められぬ弱味もある。とはいえ、その段階でも1400mの持ちタイムが示す通りの能力。広い府中でもやや窮屈になる距離でここまでクラスを上げてきたのだ。追走がよりスムーズになるマイルなら取りこぼしようがない。実際、同じ左回りの中京でタノンチェイサー(きさらぎ賞勝ち、NHKマイルC4着)とのタイム差なしがあるほど。

2歳戦では土曜1Rを狙い撃ち。まずはコミカライズ。態勢を整えていた初戦でよもやの5着。その過程ではウッドで実にシャープな捌きを見せていた上に、Aコースの内側からスタートするゲート練習でも鋭いダッシュを見せていた。唯、実戦でゲート入りしてから待たされたことで平常心を欠いて安目を打った形。絶えず外から被せられる状態が続いたことも響いた。エクスキューズは成り立つし、持ち前のスピードを生かせる馬場に替るのなら見直すのが自然の道理。

同じように馬場に泣かされたのがケイティディライト。最終追いで一気にパトーナーを突き放した動きにポテンシャルを感じさせたが、如何せん基礎体力が伴っていない段階での道悪なら応えて当然だし、待機策が嵌る展開で勝ちに行った分、粘れなかっただけ。中1週ながらシッカリと坂路で追い切れたから反動なし。というより、負荷をかけた本馬場調教がデビュー戦との見方も成り立つ。こちらも軽快さが売りで新潟の芝が大きなフォローに。






柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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