関屋記念がサマーマイルシリーズの第二弾。ということなら、中京記念でその傾向が明らかになりかけている。即ち、そこでのワンツーだったのが3歳でいずれもNHKマイルCからの臨戦。左回りで劇的に変わったケイデンスコールにスポットを当てるのが妥当か。
唯、少々行儀の悪い競馬となったのがそこでの直線。つまり、何のアクシデントもなく、大外を伸び伸びと駆け抜けての2着に疑いをかけても良いわけだ。[2.0.0.0]の新潟で53キロと斤量利もある状況に逆らってみたくなる。
実績を問えば関東馬の出番でミッキーグローリーの首位争いは約束されている。昨5月までの休養期間のトータルは2年以上とパンとするまでに時間を要した。唯、トモに力がついた分、均整が取れて実が入ったのだ。それが、マイルCSでの0.2秒差5着に結実した。始動が遅れてのここ参戦と多少の狂いはあった。また、オール坂路となったのは、同馬の定番だし、直前が4F51.4秒と確実に時計を詰めてきた。少なくとも角馬場で見かける限り、シェイプUPされた体を誇示。極端に能力が削がれるシーンはなかろう。しかし、1分31秒台への突入までありそうな高速決着の中、レース勘が勝負の分かれ目になって不思議ない。
ここは牝馬に注目してみた。特に、ハーレムラインが面白い。内枠で最短距離を選べた春・新潟で復活。激しい凌ぎ合いがあって押し切れたのだから、1.32.3秒の時計を素直に受け止めて良いわけだ。
元々、デビューからの3連勝があったように双葉より香しかった栴檀。その段階で最も盤石だったのが左回りの府中ということで、そこにヒントがあったということ。先月上旬からの乗り込みで実に入念だし、追い日ごとに着実の時計を詰めた結果の直前が坂路51.3秒。適性が明確になった時点で馬を追い込む調整が叶ったのだ。その勢いを取り上げない手はなかろう。
ライバル視できるのが、やはり同じ世代の牝馬でサラキア。53キロだった京都金杯で忙しさを感じさせたことに加え、当時からの1キロ増となると手控えたくなる。唯、決して得意とは言えぬ渋り気味の馬場だったのがエプソムSで逃げの手に出た。要するに、新たな面を出したということで波に乗った。パンとした昨秋のローズS2着で底力を見せつけたし、その直前には小倉でのレコード勝ちさえ。その2つを重ね合わせれば、初になる新潟マイルが合わぬわけない。再びの積極策でもうひと押しがあって良い。
土曜メインもフルゲート。しかも、ハンデ戦となるから、混沌とした様相になるのは当然といった反面、切り口が多様となる分、非常に興味深い。一応、高評価を与えなければならぬのが栗東から遠征してくる3歳2頭。連勝中のカレングロリアーレは底知れぬし、桜花賞での一桁着順があるジュランビルにとっての昇級は形だけ。
唯、ここではエスターテを推したい。函館からの転戦になるが、そこでの3着に地力強化を実感できたのだ。何せ、直線一気が台頭する中、前目で掲示板に残った唯一の馬で、初になる北海道の洋芝に対応してだから、価値は更に上がる。軽量であれば現級で通用するところを、既に示せていたし、飛躍のきっかけを掴んだのが昨夏の新潟。つまり、軽い芝とフラットなコースで威力倍加ということ。坂路52.5秒と先週よりシッカリと時計を詰めて臨めることから反動はないと考えた。
あと、捨て切れないのがアンブロジオ。ここ3走は今ひとつ噛み合わなかったが、外枠が応えた昨年の当レースで4着だった点を思い起こすべきで、そもそもが現級での連対実績さえ。輸送を控えている為、楽走といった印象でもゴールに飛び込んでみたら5F65.3秒の好時計。体を大きく使ったフォームで好調は間違いないところで、復活するとしたら今回を措いて他なし。
その直前、三面川特別は牝馬限定戦。冬の小倉では振るわなかったマルーンエンブレムが立て直してきた。始動が先月に入ってすぐと目標を定かにした結果、実質の追い切りだった日曜には坂路51.9秒と自己ベストを更新した上に、直前にも時計を出せたのだ。輸送を控えているにも関わらず。400キロに満たない体でも心肺機能が優れていて夏場は得意中の得意。広いコース、長い直線での決め手比べと舞台装置は整った。
日曜の特別戦では、まず9Rの2勝クラスから。現級で実績を重ねてきた馬に人気が偏りがちだが、敢えて3歳グレイシアを取り上げる。2歳暮れのGIは大幅な馬体減と経験不足がモロに出た形。逆に、上手くセーブしつつの仕上げだった5月・京都では難なく輸送をクリアした。しかし、如何せんレース運びが拙かった。高速ターフで位置取りが明暗を分ける中、後ろからではその時点で圏外と度外視できるわけ。1.21.6秒での楽勝と衝撃のデビューを飾った地に照準を合わせたのは理に適っているし、2歳時より格段に筋肉量がUP。それ故、前2頭を置いての道中から結局は追いつかずに単走の形でも1F12.5秒と鋭い伸び脚を披露できたのだ。仕上げに寸分の狂いなし。
ダート戦の柳都Sはアームレングス。1000万下の勝ち上がりが際どかったのは道中でモタついた分。とはいえ、エンジン点火からの伸びにはワンランク上のポテンシャルを感じさせた。それ以来となるが、間隔を開けて太くなるタイプではないし、帰厩後1本目に併せ馬を消化できたほど、仕上げが進んでいた。そして、鍛錬を重ねた結果の最終追いが2歳相手の先行態勢だったように感触を確かめる程度で十分だったほど。シャープな体のラインで更に洗練された故に、1F12.1秒と鋭さに磨きをかけてきた。昨夏まで遡れば、当舞台での3着があって上位2頭が重賞級といった中で早目先頭の強い競馬。爪不安明けだったことを思えば価値◎で、1800mなら紛れもなくなるということ。
柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。