暮れも押し迫った時期ということがあるが、中距離だけに完成度の高い馬が集う朝日杯に比べると層の薄いといった印象のホープフルS。
唯、クラシカルな三冠に直結するのはこちら。あと、現時点の実力差に隔たりがあるといった傾向も。それは今年も同様で、抜きん出ているのが3頭といったところ。
有馬制覇で勢いに乗る矢作厩舎のコントレイル。
そのインパクトは極めて強烈で、キャリア2戦目の東スポ杯では後続に5馬身差といった独壇場だった上に、1.44.5秒のレコード。淀みのない流れにも即対応しての上がり33.1秒ならそれも道理。しかし、抜群の切れが身上でどちらかと言えば細身。最終週の荒れた馬場が足枷になるシーンも。
ならば、その状況をアイビーSでクリアーしたワーケアに一日の長がありそう。
デビュー戦以来のブランクというより、成長を促しつつの休養を経たから、稽古時からしてパワーアップを実感できたにせよ、綺麗な飛びで若干なりとも影響を受ける筈であった。
が、前を射程に入れつつといった完璧な道中があっての余裕綽々。あくまでもステップに過ぎぬ段階だったから凄い。確かに、ここに至る過程で2本がモヤに遮られて詳細が不明だったのは何とも残念。唯、一段と垢抜けた馬体になっての帰厩だったし、最終追いが迫力の3頭併せで5F66.0秒を楽々とマークしたほどなら、抜かりなしとの見立てが妥当では。
その直前、内にもぐり込んで併せに行った刹那、少々凭れ気味になって立て直す手間が生まれた。その分、初になる右回りに対して不安皆無とまでは言い難いが、全身バネといった元々に拍車がかかった身のこなし、一段と大きく体を見せているのは柔軟性が増した為と、上昇一途。
9月以来となるオーソリティーも。当舞台を経験している上に、そこでの圧倒ぶりがポテンシャルをダイレクトに伝えている。
木村厩舎らしく、美浦入りの時点でスッキリとした体つき。また、スマートというだけでなく、四肢を気持ち良さそうに伸ばすアクションに加え、鞍上の合図に即反応できるようになった点で着実に幅を広げている。2頭に間から測ったような抜け出しでの1馬身先着で当然ながら脚色も断然優勢と文句なし。
オーソリティーを取り上げるとなると、同じ組の新馬戦で僅差だった上に、札幌2歳Sの覇者となったブラックホークも俎上に載せなければならぬ。
こちらは厩舎のパターン通りに5Fからハイピッチで飛ばしての内目と時計が出やすいメニュー。とはいえ、調子には太鼓判を捺せる古馬3勝クラスに対して3馬身追走の行き出しだったから、1馬身遅れには価値がある。問題は、華奢な面を打ち消せぬこと。やはり、急坂が控えたコースでの1F延長で首を傾げたくなる。△に入るかどうかの当落線上か。
阪神のメインはダートのリステッドR。先行争い激化にみやこSで失速したスマハヤの巻返しが必至といった様相。逆らうのは無謀とするのが普通だが、デザートスネークの充実ぶりがあればそれにストップをかけるやも。
何せ、除外された中山2週目に至る過程でも唸っていたのだ。それに輪をかけてビシビシ鍛えられているのだ。先週の木曜などは、半マイルから13秒を切るラップを刻んだ挙句の5F64.5秒と、以前なら考えられぬハードなメニューを難なく消化してみせた。爪の不安と背中合わせだったことで伸び悩んだが、パンとした9月・中山で一変。その勢いはとどまるところを知らぬ。元々、発展途上の段階でもアナザートゥルースを競り落としたことさえ。初になる阪神でも狙う価値あり。
中山の他では芝マイルにスポットを。まずは12Rのセリユーズ。
少々気に逸るタイプだから現状では当距離限定と見做すべき。そうであれば前走の5着は案外。しかし、他のスイッチが入った直線で反応し切れない面を見せた。再びジリジリと詰めて力を示したわけだからレース勘の問題。従って、叩いた効果で大幅に変わる筈なのだ。実際、道中からして気合い満点での追走で少しでも緩めれば即弾けそうな雰囲気。しかも、体のラインがシャープになった効果で、ラストには回転数が一段とアップ。結果、上がりに至っては37.5秒という破格の時計が持ったまま。そのスムーズなコーナーワークが、前回時のDW左回りと大きく異なる点でもあれば、中山替りも恰好の条件。
10Rは、9月の現級で目途を立てた上に、アネモネSも制したルガールカルムが人気。レースの上がりが33.1秒、スタート直後の不利が応えた前走も度外視できるからだ。勿論、単走での1F12.5秒とシャープな伸びで調子◎。しかし、気の良いタイプで線が細い印象が未だ。つまり、突き抜けると確信できるまでのインパクトがない。
それならば、攻め強化が実感できるエクレアスパークル。
紅葉Sでの7着は初の府中で平常心を欠いた状態。ラストではデムーロも流すだけと戦意喪失だったから論外。しかも、今回が美浦移籍3戦目となって直前がウッド追いとパターンを変えてきた。それが反映されるダイナミックなアクションでの追走併入とデキが違う。秋初戦からの上昇度といった点でアドバンテージを得た。
最後に2歳戦で3Rのトーセンリミット。
2週目のデビュー戦は1.13.5秒と低調な時計の決着。その4着であれば人気になり切らないのも道理だが、そこでは砂を被ってレースに参加できぬ前半があった。体を持ち余し気味だった点もネックに。その分、実戦を経た効果は絶大で、当然ながら馬体は締まった。
しかも、4Fからのしまい重点だったとはいえ、3頭併せでビッシリ追ってラストに至っては12.1秒。ポジションからすれば、内を競り落とした直後、外から寄せられて闘志に火がついた。再びの加速でそれも凌いだのだからレベルUPが明白な中身。スムーズな追走から難なく抜け出すに違いない。
柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。