馬場開門が6時に早まって2週目がGⅠのスプリント戦。春を告げるというにはまだ肌寒いのが今週の追い日。まずは、水曜に最終調整を済ませた高松宮記念組から。
時系列でいくと先陣を切ったのがインプレスウィナー。朝のラッシュ時にウッドという定番通りで1000万下を2馬身追走しての5Fスタート。状態は高いレベルで安定。バネの利いたフットワークで脚色にも余裕が窺えた。暮れのOP特別では、今回の大本命に3キロ差あっての0秒4差だから、下馬評が低すぎるのではないか。マークは不可欠。
直後のポリにはガルボが登場。最後まで持ったままながら、1週前を2秒6も上回る5F63秒2で上がりに至っては36秒5。調教大将として名を馳せる馬だが、それを差し引いても文句のつけようがない。問題は、力関係及び、詰めの甘さがつきまとう点。年齢的にそのウィークポイントを解消できない。
サンカルロを始めとした美浦組は坂路主体。軽く触れておけば、勢いを駆ってのGⅠ挑戦となったスマートオリオン、併せ馬での54秒5という平凡なタイムは気にならないものの、直線の長いコースの実績不足となると手を出せぬ。オーシャンS好走のスノードラゴンも長く脚を使うタイプでないから、同様の評価。それならば、1週前の併せ馬でウッド5F66秒3、ダイナミックでありながら適度な落ち着きのあったサクラゴスペル。絶対王者の引退でレベル低下のカテゴリーであれば大駆けがあって不思議ない。
当コラムが木曜更新となったのは意中の馬がいるから。リアルインパクトは本日の追い切り。勿論、日曜にビッシリ追われているから軽目は織り込み済み。6時15分に他7頭とともにDコースに姿を現す。その後、速めのキャンターからウッドに移しての3頭併せ。
縦列の2番手から真ん中に入るとスパートは1F地点から。力強いかき込みで同時入線。4F56秒8~ラストは13秒3。時計は平凡だが跨った戸崎とはピタリ呼吸が合ってのフィニッシュでシェイプUPも叶った。前走時、6F戦は無理とレポートした。その考えを覆さざるを得ない。以前より角張った体型に変わり、重心の低い走りにモデルチェンジ。出遅れてレースにならなかったオーシャンSでも最後は目立つ伸びで0秒7差。広い左回りなら、空位とも言えるスプリント王座を獲得する可能性が高くなった。
今週は他でも興味をそそられるレースが目白押し。土曜・中山では日経賞。フェノーメノの復帰戦ということだけでも重要度が増す。1週前は負荷を軽くさせる意味もあってポリ。が、追い込まねばならぬ直前はホームコースのウッドに戻す。6Fから5Fにかけて先行する馬との差が広がってそれをほぼキープしながら直線へ。外のコースを取っての追い出しは1F手前。抜群の推進力で瞬く間に1秒2と大差の先着。勿論、‘跳んだ’と形容できるほど素晴らしいフォームだった昨春・天皇賞時には遠く及ばぬ。が、恥ずかしい競馬にはならないと断言できるレベルにはある。
逆に、長期のブランクがあっての臨戦になるジャガーメイルは冴えない。慣れぬウッドでの調整が気懸かりだし、馬なりでの4F52秒9という数字ほどのスピード感がないのだ。骨折明けで本数的には及第点のサトノアポロにも感心できぬ。反応は鈍いし、腹目が巻き上がって映るのは筋肉が落ちている故。
日曜はマーチS。ハンデがポイントで、ウッド5F66秒9で1馬身先着だったグランドシチーは‘老いて益々盛ん‘という表現が当て嵌るものの、如何せん58.5が可哀そう。明け4歳が優位という前評判に逆らうつもりはない。そうなるとジェベルムーサ。5Fで1秒近く追走という態勢からゴールでも結局は追いつかずに単走扱い。関係者の想定以上に走らなかったと受け取れることもできるが、3F37秒3なら時計的にはほぼ限界。むしろ、1馬身差まで詰めたのが驚きで、持ち前のパワフルな身のこなしが圧巻。当然ながら太目感もない。課題は日曜の雨予報。ペース次第では捲り切れない恐れも出てきた。となると、脚抜きの良いダートを味方につけそうなエーシンゴールドがハンデ的にも有利か。
特別戦での推奨は、日曜・阪神10Rのガイヤースヴェルト。武庫川Sでも取り上げたがその時さえ上回る稽古。今回はウッドに切り替えての3頭併せで直線では2頭の間を割る。相応の鋭さと闘争心なしでは成しえない業で、完全復活の手応え確か。内回り1400が多少窮屈でも今一度狙う。
同じ斉藤誠厩舎で印象的だったのがデビュー戦になるマリーナベイ (日曜3R予定)。3頭併せで余裕の先着。長目追いでの6F83秒2も馬場の荒れた時間帯ということで立派だし、相手に合わせただけで、少々無理しても勢いをキープできる身体能力の高さが魅力。豪州産の遅生まれ、経験馬が相手となれば分が悪く思えるが、その分で人気になり切らないのは有難い。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。