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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2020年05月21日(木)更新

デアリングタクト、敵は桜花賞組にアリ!

無傷で駒を進めてきた関西馬2頭の下馬評が高いオークス。

殊に、桜花賞で長く脚を使っての差し切りだったデアリングタクトには底知れなさを感じる。
そのラストを見る限り、マイラーというカテゴリーに収まらぬ可能性が高いし、本格的な始動が3週前といったパターンは前回同様。安全策ならこれに逆らうべきではない。

ソツなく運ばなければ間に合わぬ筈だったスイートピーステークスで上がり32.5秒と桁違いのラストを見せつけたデゼルの能力に疑問を挟む余地なし。
ただ、自身も負担をかけずに追走できたことが最後の爆発力に繋がったという側面も。つまり、コーナー4回でメリハリを利かせるのが困難になる恐れを打ち消せぬわけ。デビューが遅かった分、押せ押せのローテといった点でも手順を踏んでのステップアップだった桜の女王には劣るのでは。

一冠目の桜花賞、やはりポイントは道悪だったこと。そこで力を封印された馬の巻返しあるやなしや、を見極めたい。まずはミヤマザクラ
福永が無理に抑えたことによってリズムを崩した分、そこから盛り返しても及ばなかったというのが総括として妥当ではないか。加えて、2月・府中での巧みな立ち回りを鑑みれば、コース替りはプラスに働こうし、易々とバテぬ面は牡馬相手の京都2歳ステークスが示す通り。

あとは・・・

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進化を見せつつあるのがホウオウピースフル
精神面の脆弱さが露わになった冬場とは打って変わったレース振りが前哨戦だったから。実際、気品溢れる立ち姿とシャープな身のこなしに将来性を実感させる。
しかし、操縦性が高まったとはいえ、行き出し6Fだった1週前はラストで控え気味だった上に、直前が先行態勢からの5F71.0秒。現状維持がテーマとなっている分、GⅠに臨むには物足りぬ。


土曜メインはOPのハンデ戦。支持を集めているのはザダルで、ダービー卿チャレンジトロフィーの除外があっての再仕上げとなるが、スムーズに体を運べた上に、直線でのストライドが実に豪快と、年明け以来といった雰囲気は微塵もない。また、全身を余すことなく使える大箱の府中なら中山とは違った姿を見せつけられるのでは。ただ、ハンデ56キロが少々見込まれたといった感じ、なきにしも非ず。
ここは5歳が主力。特にブレステイキングは、ザダル同様、窮屈になりがちな右回りが躍進を阻んでいた。
加えて、新潟大賞典を目指していた(賞金不足で除外)分、先月上旬からの始動と入念過ぎる過程を踏めたのだ。それは、馬体のハリがこれまでとは違うといった要素も大きい。現に、四肢を気持ち良さそうに伸ばすラストが再三再四だったし、単走での4F53.7秒だった最終追いにしてもラスト100mを切ってからの推進力が並大抵でない。暮れのチャレンジカップ組重視で、本線はそこで5着だったゴーフォザサミット

府中の他では芝1400m戦にスポットを当てて、まずは日曜・フリーウェイステークスから。3勝クラスのハンデ戦で紙一重になること必至の中、レノーアを抜擢する。
ここ2走はなし崩しになるマイルだけにムラであっても目を瞑るべき。とはいえ、当クラスでも粒揃いだった2月・節分ステークス組といっただけでも大きな後押しになる上に、馬体維持が主眼だった冬場からリフレッシュを経て活気に溢れてきた。結果、3頭縦列の先頭からとセーブ気味だった追い切りでも5F68秒を楽々と切って手応えに余裕、ラストに回転数が一気にアップと申し分なし。人気処が同じく牝馬で53キロのハンデと舞台装置は整った。
あと気になるのは、ウインフェニックス
叩きつつ良化を待たなければならない反面、今回は1週前に坂路で51.5秒とハードに追えたから正に目論見通り。昨年の同じ開催で2着があるように、勝負気配漂う上に、当時より1キロ軽いハンデ。押さえておいて損はない。

土曜・高尾特別、普通なら復帰戦で上々の伸びを見せての3着だったリリーバレロを中心に据えたいところ。
ただ、ひ弱さは如何ともし難く、今回は中1週にも関わらず、坂路で58.5秒と軽い。おざなりといった印象は拭い切れず、むしろ二走ボケのパターン? 
代わってトーセンリスト
初距離だった3月・中京でひと押しが足りなかった反面、上手く立ち回って3着争いに食い込んだように、適性◎。それは、いきなりの1.20.9秒に裏打ちされているし、-14キロにも関わらずだった点で価値は更に高まる。また、そこでも過程と異なり、今回は広いポリでの5F追いを敢行と中身の上でも雲泥の差と断言できる。

最終週を迎える新潟・メインは韋駄天ステークス。さすがに当条件のスペシャリストが揃って目移りするほど。その最たるが直線競馬【3-1-0-0】のライオンボス
5F73.1秒が直前とアピール度が低いように思えるが、1週前のDWでは大きく追走するパターンと十分な負荷をかけられている上に、重戦車そのものといった身のこなしでトップハンデ何するものぞ。
強力なライバルはナランフレグ
現時点の実力最右翼といった点に異論を挟めぬのは、2月・シルクロードステークス3着があるから。前走で伸びを欠いたのは、ひと息入れての+10キロと緩めだったゆえ。現に、DWで1本追い足りなかったのだ。対して、今回は3頭併せあり、モヤの中でのラスト11.7秒あり、挙句の最終追いがゴムマリのような身のこなし。そもそも、アイビスサマーダッシュの前日だった昨夏には、それを上回る54秒6を叩き出しているほど。
大穴ならアポロノシンザン
昨秋、初の直線競馬では戸惑いがあった分、エンジン全開とはいかないまま終わった。が、0.3秒差に過ぎなかったし、ハナを切れなくても前に迫るシーンがあったということで手応えは掴んだ筈、何より、当時は取消明けで手探りの仕上げと別定58キロが足枷にも。そこからに2キロ減が大きい上に、1週前には3頭併せでのDW5F64.3秒をマークと大幅に迫力アップ。正しく、真一文字に駆け抜けそう。

あとは2勝クラスで。土曜・大日岳特別はフォッサマグナで決まり。
元々、筋骨隆々のスプリント体型で気性までもがそう。だからこそ、キャリア2戦目で挑んだ共同通信杯や2月・府中での結果がある。即ち、折り合いに苦労するまま終わったということ。逆に、前後半差が4.6秒に及んで先行勢が雪崩れを打って崩れる中、3着に残った前走にこそ光明が。
綺麗な飛びを生かし切れない馬場だったにも関わらず。従って、好状態が続く新潟の芝なら違う姿を見せつけるだろうし、力強いながらも引き締まった体と寸分の狂いのない仕上げで臨めるのが何より。

日曜12Rは、カラ人気になりそうなマイネルバトゥータ
冬場の現級2戦では見処なく二桁着順が続いた。まず、スタートでのビハインドが応えたし、馬を攻め切れぬままと仕方ない状況であった。要するに、DWをメインに調教を重ねたことによってシッカリと体を使えるようになったゆえの見直しが妥当なわけ。フラットなローカルを目標に据えて青写真通りに良化を辿れた点も大きい。少なくとも1000mオンリーの馬でないことだけは確か。



柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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