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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2020年06月11日(木)更新

エプソムCは有力馬に死角アリ!?

エプソムカップを見据える組が、重要なステップと見做すメイステークス。ハンデ戦だったとはいえ、同じ舞台からの中2週ということで、ローテーション的にも嵌め込み易いから。
しかも、そこでは1.44.3秒の決着。価値が高まるとの見方が大勢なのはやむを得ない。

ただ、内を綺麗に抜けたアイスストームにとって二番が利く今回だろうか? 後続が適度に脚を温存しながらもピタリと折り合えた恰好のペースだっただけに、額面通りには受け取れぬ。

まして、そこで56キロだったソーグリッタリングは1キロ増しに加え、京都金杯以来ながら-14キロ。結果的にパーフェクトだったレース運びとは裏腹に、ここに向けての始動が遅れがち。むしろ、ニ走ボケのパターンではないか。

あともう一点、過去にエプソムCを制したことのある馬が参戦。
まずは一昨年のサトノアーサーにとっては格好の鞍で、今季4戦で崩れていない点も褒められて良い。
ただ、4歳秋からの捻挫による長期ブランクが如何にも痛かった。結果、坂路主体の調教パターンとなってから勢いが失せた感否めず。

それならば連覇を狙うレイエンダをより重視する。
ユッタリと構えるレース運びが板について切れに磨きがかかっているからだ。特に、東京新聞杯がガス抜きとなってのダービー卿チャレンジトロフィーでは際どい2着争い。巧みなコース取りだったこと自体、幅が出た証し。また、1週前にグランアレグリアのパートナーを務めたことが質アップを物語っているし、直前は感触を確かめる程度のしまい重点。これは、昨年同様のパターンで、仕上げには寸分の狂いなし。

が、敢えて主力として扱うのは4歳で、まず取り上げたいのがピースワンパラディ
OP入りを果たした直後ということで相手強化は歴然。ただ、その前走には目標にしていた鞍をスキップした経緯がありながら着差以上の余裕が。つまり、叩いた効果は絶大で、先週の木曜追いなどは行き出し長目でも見事に反応しての1F12.0秒。ストライドが一段と広がったと目に見えて分かるほど。
無駄を削ぎ落とした全体像が本格化を思わせるし、キャリア3戦目だった青葉賞3着といった元値の高さや距離に対する融通性にも着目すべし。馬場コンディションを問わぬ点も心強い。

昨10月の精進湖特別、ピースワンパラディを負かしたのがアトミックフォース
当時は1キロ貰った勘定で、展開を味方に引き入れたのは確か。しかし、そこからの進境ぶりが尋常ではない。
実際、前回のGⅢ新潟大賞典では自らがレースを引っ張る形でも2着。新潟外回りを克服したのだ。5Fから一気にスイッチオンといったパターンに変えてから馬に実が入った模様。それは躍動感を伴った直線にも表れていて、四肢を目一杯伸ばす身のこなしでピークを迎えている。

あとはシャドウディーヴァ
注文がつく右回りとなるとOPでは辛いし、前走10着はあくまでGⅠ。しかも、虚を突かれた感じのスタート直後、3角で狭いポケットに嵌った。前目が必須の高速ターフとあっては出番がなくて当然だったわけ。
ただ、マイルに関してなら1.0秒近く持ちタイムを詰めた事実を忘れてはならぬし、そこからの立ち直りが早かったのは体質強化の証。
追い切りの5F68.4秒にしてもラスト1Fを切っての一気に回転数アップと見事なフィニッシュ。1F延長、5月の特殊な馬場と異なることも後押しに。


特別戦は2勝クラスをピックアップして日曜・芦ノ湖特別から。ここはサトノフウジン
2勝目マークの2月・フリージア賞を境に操縦性が一気に高まった反面、ダービーを目指したプリンシパルステークスでは真っ正直な競馬で後続の目標に。加えて、成長を促すといった充電だったにも関わらず、その1週前の青葉賞スキップで馬が萎んでしまった感じ。
対して、今回は短期放牧からの帰厩が遅めだった点に工夫を感じるし、皮膚の薄さが活発な新陳代謝を呼び込んでいるといったプラス材料も。現に、先週の木曜には持ったままでも糸を引くように伸びての1F11.9秒と鋭さが違ってきた上に、直前は目下絶好調のエアジーンを向こうに回しての併せ馬消化。マイルで存分に切れそう。

土曜・三浦特別はレイテントロアー
西下しての3歳OPでは弾ける雰囲気のないまま12着。けれども、先行争い激化の様相を見越した鞍上が抑える競馬を試みて持ち味を殺したといった側面も。つまり、決め打ちが仇となった。軽快さを前面に押し出すのが身上なだけに、見限るわけにはいかないのだ。
加えて、力を出し切っていない前走ということは、消耗も少なく、DWでの動きが冴えわたっている。ビッシリ併せた先週を経て一段と活気を呈した挙句の最終追いなどは、行き出しからして外ラチに触れんばかりと負荷をかけた単走。新たな成長段階に突入したと捉えて良い。

平場戦では土曜12Rのイマジナリーライン
直前は単走での5F71.0秒と目立たぬ時計。が、2度の除外があったほどで、微調整程度で十分なほど体が引き締まっているし、力が漲らせてもいる。これは中間のレベルアップゆえで、中には古馬OPを追走しながらラストの動きは互角と、目を瞠るほどの良化ぶりが何とも心強い。
しかも、初ダートだった4月・中山において、1.51.0秒とレベルの裏づける決着となる中、常に前を窺う真っ向勝負から一旦は2着といったシーンまで。
デビュー当初から豪快な動きを見せつけていた馬で本質はダートと睨んでいた。その身体能力が露わになるのは広いコースで、府中マイルというならどう勝つがテーマとなるのでは。

続いては日曜7R、ジャッジが待望の2勝目をマークする。
一気の距離延長だった前走は、前を捕らえてほぼ手中に収めたかに見えた刹那、出し抜けを食った。淀みのないタフな流れの中、仕掛けのタイミングだけの差。これは、その時点で+16キロと立派になったが為。
以前の稽古では追っての反応が今一息だったが、入りが緩い調教では鋭さで劣っただけで、持久力を生かせるシーンでこそ、との証しにもなったわけ。しかも、今回は5Fからいきなり14秒を切るラップで、エンジン点火の半マイルからに至っては12.8秒を刻むハードさ。フォームがダイナミックになっての同条件でそれに斤量減が加わるのだ。今度こそ。

最後が新馬戦で、注目の芝1800が日曜5R。
時計的にはグアドループが一歩抜きん出ている。
何せ、DWでは3週にわたってビッシリ併せて、うち5F65秒台が2本。それも、外から被される形になっても怯む気配はないし、豪快なアクションでの脚色優勢と奥行きを感じさせるには十分のラスト。
ただ、まだ無駄な動きが見受けられる分、実戦に行ったなら道中のロスが多くなりそう。従って、ペースが落ち着く当距離ではしまいが甘くなる恐れも。
逆に、センス抜群のレガトゥスにはその心配がない。
丹念な乗り込みが期待の表れだし、ピッチを上げんとすれば、先週のような6F追いにも難なく対応してのラスト11.6秒といったシーンが見受けられたし、緩めの入りだった最終追いでは縦列の2番手で冷静に立ち回った。そこでは直線に向いてからは内と外の古馬を窺う余裕さえ。促されてからの反応が早いのが何よりで、一気にストライドが広がる点に非凡さが。すぐ上のスカイグルーヴを上回るスケールが伝わってくるのだ。
今回はおろか、先を見据えるといったレース運びでの通過となる筈。

柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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