上半期の掉尾を飾る宝塚記念は、満を持しての出走となるサートゥルナーリアの一本人気。唯一のウィークポイントと目されていた左回りを金鯱賞で克服して見せたからだ。
今回、CWでの速い時計が1本足りないような気はするが、タフな流れだった暮れの有馬記念2着に表れている底力には敬意を表すべきだし、成長力も実感できるのであれば3度目のGⅠ制覇に待ったなし、と結論づけるのが妥当なのだろう。
サートゥルナーリアに絡まんとする候補としてまず挙げたいのが牝馬。
同じ阪神のGⅠ、大阪杯を軽く扱うことなどできぬのだから、そこでの覇者ラッキーライラックということになろう。
しかし、隊列がスンナリ決まる展開で、格付けに相応しい凌ぎ合いだったかと問われれば、否。まだ進化の真っ只中といった点を加味しても勝ち切るまではどうか?
それならば・・・
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クロノジェネシスの前走は確かに降参といった感じの2着。ただ、逃げ馬を捕えんとするのに道中で外々を回らざるを得なかったし、スパッと切れる脚で劣ったという側面も。府中マイルでの好時計はあるが、本質が最も顕著になったのが2走前の京都記念。持久力を問われるシーン、まして渋った馬場なら水掻きでもついているのかと思えるほどの推進力がある。梅雨時期、その後押しがあって良い。
春のグランプリに相応しいメンバーになったのは、復活が待たれる古豪のエントリーがあるから。
その最たるはキセキ。
前年度はリスグラシューの2着というのだから、条件替りを狙い撃つ向きがあって良い。ただ、今年は格段にレベルアップ。距離に対する限界とは言えぬ天皇賞であえなく退いたように、勢いが失せた感も。
それならば、ローカルで力をつけた2頭を。正攻法で進めた結果の天皇賞着をフロック視していけないスティッフェリオ。そして・・
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重賞のない府中、まずは土曜メインのアハルテケステークスから。多士済々で目移りする中、安全策ならレピアーウィット。
行き出し4Fの追い切りではデビュー前の2歳に1馬身及ばなかったが余裕残し。これは、先週の阪神で弾かれた故で、その時点でも態勢を整えていたから、微調整で十分だったということ。ここ2走、トーンダウンする筈の右回りで3、2着と幅を広げての府中。当コースであれば無理せずに前目といったレース運びが可能で安定味は増す。
これと肩を並べるまでになったのがアシャカトブ。
3月・マーチステークスでレピアーウィットに先着を許したが、展開面でのビハインドを考慮すれば、内容では優ることになろうし、そこからの相手強化があった平安ステークスでも自らのスタイルを押し通さんといった果敢さが。以前にはなかった機敏性と辛抱強さを如実に物語っているわけ。
さらに、1週前のDWでは好時計での併せ馬、直前の坂路は自己ベストタイの51.7秒と鍛錬に余念なしといった点で上積みは計り知れないのだ。3歳時の当舞台、青竜ステークス→ユニコーンステークスで振るわなかったことは忘れて良い。
あとはデアフルーグ。
デビューからの3連勝を思えば、その後が尻すぼみだったし、今季の3戦ではそれに輪をかけるほどの案外さ。
しかし、伸び足りなかったコーラルステークスは初の1400mながら追走に関しては自然体と、現時点ではマイル以下が守備範囲となりそう。加えて、そこでリフレッシュした効果でトモが深く入るフォームになった故、大きなアクションに。幾分重かった1週前の好時計があるし、直前でも3頭併せと馬を追い込み切れなかった冬場からの変り身が凄い。
日曜の特別戦では江の島ステークスを。まず取り上げたいのがイェッツト。
前走は時計を要する芝だった故、前半は思い通りに進んで行かなかった。ただ、直後に目黒記念を制した勝ち馬を始め、3勝クラスの中でも最上位と言えるほどのメンバーにあって上がり34.1秒での4着には相応の価値があるし、当時は-4キロ。年明け以来で、1本追い足りない過程だったから、付け焼刃での臨戦といった要素も。
対して、今月に入って一気にピッチを上げた結果、併せ馬は5本にも達した。しかも、全て外目のコース取りと中身は実に濃厚だし、見た目にボリュームアップ。つまり、骨折前の3歳時、ダービートライアルで3着に食い込んだ元値の高さを見せつけられる下地が整ったわけ。
あと注意しなければならないのがむらさき賞組。ここは、60秒を超える1000m通過でソツなく回ってきたもの勝ち。従って、-20キロの見切り発車で位置取りからして致命的だったトラストケンシンには巻き返す余地あり。
しかも、今回は坂路中心に切り替えて直前は2度上がって時計になるインターバル。これは、昨秋に自己条件2着からアルゼンチン共和国杯での大健闘、及び2月と同様のパターン。勝負気配が透けて見えるではないか。
1勝クラスからは土曜7Rのヴィアメント。
一息入ったが、1週前の時点でもラストで鋭く反応できたように、リフレッシュ効果が目に見えているし、最終追いに至っては3頭併せの真ん中にあって怯むところなし。つまり、ムラだった面が消えつつある。とはいえ、急がされる形で半ばリズムを整えられなかった4月・福島で結果的には上がり最速をマーク。つまり、ユッタリと運べる条件で潜在部分が露わになりそう。
そもそも、母とは全く異なるパワー型で身体能力を前面に押し出せる舞台でこそ。特に、目を惹くのがかき込みの強さで、以前からダートでこそと睨んでいた。
日曜7Rはニーズヘッグが惜敗続きにピリオドを打つ。
府中に転じて5月からは一気に安定味が増した。コーナーごとにストレスを溜める中山とは別馬と見做すべきなのだ。
特に、前走は1000m通過59.5秒で飛ばす強力な逃げ馬を負かしに行く強い競馬で、結果的にはそれを競り落とした。使えば使うほど味が出てくる上に、当コースでは時計面を含め、瑕疵なし。無論、前走後も併せ馬2本とシッカリ追えているように、反動どころか、そのタフネスぶりを如何なく発揮しているではないか。牝馬限定戦となれば如何にも組み易し。
柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。